IFルート 一話:狂った運命
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されない。故にリスクを覚悟で直進する。
「固有時制御――」
体内の時間を操作すべく暗示の言葉をかける。
しかし、そうはさせぬとでも言うように鎖型のバインドが切嗣の下から現れる。
そこには誰もいなかったはずだと驚愕し、視線を向けるとそこには一匹のフェレットが居た。
(しまった! ユーノ・スクライアは変身魔法で姿を変えられるという情報は頭に入れていたはずだった…っ。姿が見えない時点で疑っておくべきだったか。だが……この距離なら問題なく切り抜けられるはずだ)
夜の闇に紛れるように姿を小さくしていたユーノの策に一瞬だけ気を乱される。
しかしながら、勝機は逃げてなどいない。バインドが来ようとも捉えられなければ良い。
己の時を操作する最後の一節を唱える。
「三倍速!」
自分以外の全てのものの速度が三分の一になったかのように感じられる。
それは自分が他者よりも三倍の速度で動いているからこそ。
ゆっくりと自身を捕らえに来る鎖の間を掻い潜り直進していく。
アルフが驚きに満ちた顔で手を伸ばしてくるがそれを大きく躱すことなどしない。
触れるか触れないかのギリギリの距離を通り抜けていく。
本来流れる時間であれば無理だろうが三分の一になった時間であれば造作もない。
相手の手から見事に抜け出し、アリアの前に到着する。
「ぐうぅッ!」
「切嗣、あなた…!」
ミシリと嫌な音がアリアの鼓膜を打つ。
固有時制御の度重なる使用による体内時間の修正が切嗣の肋骨を折ったのだ。
苦しそうに顔を歪める切嗣に心配して声をかけるアリア。
だが、彼はその優しさを鬼気迫る表情で撥ね退ける。
「…ッ、僕のことはどうでもいい。バインドを解いたらすぐに封印を―――」
切嗣はその言葉を最後まで言い切ることができなかった。
背中に突き刺さる小さくも大きな衝撃。
呼吸ができなくなり、今までの疲労の蓄積から視界が白くなりながらも体は銃口を向ける。
そこで、ようやく自身を打ち抜いた者の声が届いてくる。
「スティンガーレイ」
それはデバイスを壊され、額から血を流すクロノの声。遥か遠くからの遠距離射撃。
何も魔法とはデバイスがなければ使えないものではない。
しかし、この距離を正確に、しかも殺さないように撃ち抜くのは並大抵のことではない。
「相手の目的が分かっているのなら、そこに張っておくのが定石だろう」
「……ッ。あの、痛みさえなければ拘束は解けていた…ッ」
崩れ落ちようとする体を無理に支えながら切嗣は声を絞り出す。
固有時制御の痛みがなければ拘束を解くことができ切嗣の勝利だった
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