2部分:第二章
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第二章
「ここは」
「はい、どの服でしょうか」
「これですね」
こう言ってだ。そのうえで出してきたのはだ。それは。
アオザイだった。それを見てだった。
チュアンは顔を顰めさせてだ。こう彼に言うのだった。
「あの、これって」
「アオザイですかれど」
「今時アオザイなんて」
「皆着ていますよ」
「もう古いですよ」
最新の流行を追い求めている彼女にしてみればそうなのだった。
「そんなのって」
「いえいえ、アオザイはですね」
「どうだっていうんですか?」
「とてもいい服です」
こう話すのだった。
「動きやすいですしそれにデザインもいいですし」
「もう古いですよ」
「古くはありませんよ」
まだ言う彼だった。
「だからどうでしょうか」
「別の服を御願いします」
これが彼女の返答だった。
「別の。日本の流行の服をです」
「日本ですか」
「はい、日本です」
チュアンは言い切った。
「やっぱり日本のが一番じゃないですか」
「まあそうですね」
それは店の人間も認めた。
「悪くはないです」
「何かあやふやな返事ですけれど」
「いや、だからですね」
「アオザイがいいっていうんですね」
「本当にどうですか?」
男はこう言って引かない。
「安くしておきますよ」
「安くですか」
「はい、安く」
ベトナムではお互いに値切りをし合って買うことが非常に多い。非常に逞しいベトナム人である。
「それでどうですか?」
「それじゃあですね」
「はい、買われますか?」
「値段によります」
そしてチュアンもベトナム人である。こう言うのであった。
それから激しい値切り合戦を繰り広げてだ。彼女はそのアオザイを買ったのだった。ついでに日本の服を買うことも忘れなかった。
店の男は呆れながら彼女にいった。
「毎度あり」
「はい、有り難うございます」
「しかしお姉さん強いですね」
このことを言うのを忘れなかった。その値切りのことである。
「本当に」
「買い物は慣れていますから」
にこりと笑って返すチュアンだった。
「ですから」
「いや、まだ学生でしょ?」
「大学生です」
「それでその強さは」
「いいですか?」
「いいです。いい奥さんになりますよ」
こんな話もした。何はともあれチュアンはアオザイを買った。その白いアオザイを着て登校してみるとだ。友人達は次々に言うのであった。
「あれっ、アオザイもよくない?」
「そうよね」
「これで結構」
「いいわよね」
評判は中々いいものだった。
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