第1話
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翌日、彼女はアカデミーへ来ていた。もちろん、それは紅に相談するため……ではなく、具体的なイメージを掴むために様々な資料を探そうと思ったからである。木の葉隠れの里には一般開放されている資料館や図書館などがあるが、忍の資料は里外不出のものだ。その点、アカデミーの図書室はこれから忍になるアカデミー生のために多くの資料を備えている。
きょうのアカデミーは休校日。一般家庭出身で修行できないこどもたちのために休校日も利用することが可能であるため、使える時間を十分につかって自分の目指す姿を探そうと思っていたのだった。
「おう、テンテンじゃないか。きょうはどうした?」
「イルカ先生、きょうは図書室を使わせてもらいたくて……」
「そうか、わかった。まったく、ナルトのやつもテンテンくらい真面目だったらいいんだがな……」
「ナルトって……」
「ああ、俺の担当しているクラスの問題児なんだがな。負けん気はあるものの体術や忍術まかりで勉学はさっぱりだ。忍としては術だけじゃなく勉強も大切なんだがな」
「ははは」
テンテンもナルトという少年のことは聞いたことがある。一つ下の学年にいる問題児で落ちこぼれ。同じ学年にも落ちこぼれと呼ばれている存在はいるが、彼以上にそのナルトという子は多くの者から煙たがられていると聞く。そのどちらともあまり関わったことがない彼女としては、そんな問題児を同じ生徒としてみるイルカはすごいと思う。そして同時にいつの間にか彼らを見下している自分に気づき、嫌な気分になった。
「まあ、そうはいってもお前以外に休校日にアカデミーを利用するっていう子は他にいないんだけどな。だからまだ図書室のカギはかけっぱなしなんだ。終わったら職員室に戻してくれればいいから、自分でカギを開けてもらってもいいか?」
「いいんですか?」
「本当はダメなんだけどな、テンテンなら大丈夫だろう。それに、きょうは他の先生も休みでここを空けるわけにはいかないんだ。悪いんだけどいいか?」
「それはもちろん、いいですけど」
「なら頼んでいいか?」
「……はい」
イルカに渡されたカギを握りしめ、彼女は図書室へ向かう。
真面目、信頼、勉強。彼女にとってこれらの言葉は決してよいものではない。本当は他の女子たちみたいに色恋にはしゃぎたいし、問題児の彼らのように先生に目をかけてもらいたい。しかしいま気になる男子はいないし、現状に憂いているいま、そんな暇はない。自分が天才であれば教師に目をかけてもらえるだろうが、そんな才能はない。だからといって基本はできてしまうため、わざわざ手を抜くのは嫌だった。
彼女は自分を真面目とも思わない。先生に信頼されるほどの何かをもっていないと思っているため、手に持ったカギが本来の重さ以上に重く感じた。
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