第1話
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出迎えたのは父親であるテンインである。
嘗て初代火影が木の葉隠れの里を創立する時、現在では名家と呼ばれる一族以外にも、他の大陸からやってきた異国の一族を迎え入れた。テンテンの家はこの異国の一族にあたる。そのため名前の構成が木の葉隠れの里の他の者と異なる。
「夕飯はどうすル?」
「いい。きょうは疲れたからもう寝るわね」
「わかった。ちゃんと休めヨ」
幼い頃、木の葉隠れの里ではなく彼らの家における本国に育ったテンインの少し訛っている。彼の言葉に返事もせずにテンテンは自室へ戻った。
「はぁ……」
授業が終わってからこうしてベッドに倒れこむいまのいままで、ずっと自分の悩みを消化できずにいたテンテンは、こうして落ち着ける自室で横になってもまだ、どうすべきかわからずにいた。
彼女の悩みは他の者からすれば些細な悩みなのかもしれない。特に、お年頃の女子にとっては悩む価値もない程度のものだ。しかし、忍になる者はその多くが壁に当たる。彼女はその悩みを抱えるのが少しだけ早すぎただけのことだ。
「わたし、どうしたらいいんだろう?」
彼女の悩み、それは今後どうすればいいのか、ということだ。彼女はこれから忍としてどうなりたいのかという大きな壁に当たっていた。明確な答えがないからこそ彼女の悩みは進まない。
才能さえあればその力を磨けばいずれ高みへとたどり着くことができる。憧れる存在がいれば、よりその存在に近づけるように努力をすればいい。その内に自分のなりたい姿もみつかるだろう。
しかし、彼女には自分の才能も憧れる存在もいなかった。アカデミーでの成績も、平均は超えるが上位にはなれず、忍術は基本ができても応用が拙い。親が忍なら憧れる存在にもなるのだが、母親は家に居らず、父親のテンインはただの武器屋を営むおっさんだ。いい親だとは思うが、忍として憧れる存在ではない。忍として一番身近な存在であるアカデミーの教員はどうか。何度か話をしたことがあるイルカは先生として好ましく思っていても、違う。ミズキは論外。紅は――
「……はぁ」
自分の胸を確かめて、違う意味でため息を吐く。
慌てて忍の姿であると思い直し、再び紅の姿を思い浮かべ、諦めた。親もダメ、身近な忍もダメ、もう何をすればいいのか彼女にはわからなかった。
そうは言っても彼女の悩みはまだ必要ないと言える。アカデミーに通ううちにカリキュラムに着いて行けずに諦める者も少なからずいる中で平均以上の評価を得ていることや、基本ができるのは十分に優秀といえる。アカデミーレベルでは突出した能力はまだ必要ない。自分の目指す先がみえないのも当たり前のことだ。
家にある書物をパラパラと読んでみたテンテンであったが、結局何がいいのかもわからずにその日はそのまま寝ることにしたのだった
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