一章
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見下ろすだけ
「何をわめこうが、俺には力も、金も、権力も通用しない。言っただろ?VIPだって。無駄な命だったな、役人さんよ」
泣いて暴れて、それゆえに役人の死は早まり、青白い顔を涙で濡らしたまま、ゆっくりと息絶えた。ゼロはそれを確認し、タバコを吸いながら、今度は町人の方へ歩いた
「お、お客さん……が、あの、ゼロ……?」
町人が走り去るなかで、店主は逃げたりはしなかった。ただ、できなかったのかもしれないが……震え怯えながらも言葉を発した
「悪かったな、黙ってて。あんまり名乗れる名前じゃねぇからよ」
ゼロは鋭い目を空へ向け、暗い夜をぼんやりと眺めた。
「あの役人は最後までお前らに助けてくれ、とは言わなかったな」
「……あの人らしいよ」
ゼロは揺れる煙を見ながら、風を感じる。そろそろ、発たねばならない。町人か役人の警備兵かが、軍にコンタクトをとるに決まっている。ゼロはため息をついた
「……あの役人は俺の目からみてもクソ野郎だと思う。まぁでも、残念なことにあいつの後任も似たようなやつの可能性が高い。何も良いところがない辺境地に役に立つ人材を仕向けるわけがねぇからな」
「……」
「過去と同じことになるか、ならないかはあんたら次第だが……どうする?」
「どうもこうも……なるようになるさ。役人には逆らえない。我慢して生きていくしかないのさ」
ゼロはクククと笑い、懐から名刺を差し出した。銀色の、飾り気のない一枚の名刺を
「そうだろうな。お前らはそうして苦しみ悶えながら働くだけで一生を終える。そのままだったらな」
「……これは?」
「あるやつの連絡先。そいつははっきり言って黒だ。闇のなかの住人。だから白のままじゃ得られないものをくれる」
店主は連絡先のみが書かれた名刺をまじまじと見つめた。これはあくまのささやき。おそらく、ここに連絡したときから悪になるのだろう
「選べ。白のまま、ただ働いて長く生きる奴隷の人生か。黒になり、リスクを伴いながらも人として早死にする人生か。自分で決めろ」
ゼロは振り向き、その背に悪魔の翼を宿す。月の明かりを受けてなお、その色は黒。黒くかがやくだけだ
「この人に連絡したら……どうなるんだ?具体的に……」
「自由と金は約束されるだろうよ。降りかかるのは破滅のリスク……まぁそいつ、わがままは許さないが聞き分けがねぇやつじゃねぇから。望みを叶える……いや、叶えさせるやつだよ」
「……」
「決めるのはお前だ、店主。自由にすればいいさ」
そう言ってゼロは飛び立った。
後には変わり果てた姿の役人の遺体と座り込んだ店主。彼のいた形跡はかけらもないが、確
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