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魔法少女リリカルなのはStrikers〜誰が為に槍は振るわれる〜
第一章 夢追い人
第7話 彼の来た理由―前編
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うような、そんな空っぽな仮面のような顔。
その中で唯一、その瞳だけは彼の感情を宿していた。
憐憫と、そして羨望という相反する二つのが絡み合う瞳でなのは達を見つめるラディは、ゆっくりとその話に続く言葉を口にした。
「知ってましたか。敵を前に、“武器”を手にして戦えるって、ホントはすごく恵まれた状況なんですよ?」
息を飲んで自分に向けられた視線を置き去りに、彼は再び前を向いた。
――この話はもう終わり。後は黙って見ていろ。
向けられた背中が雄弁に語るその声に、喉までせり上がっていた非難の言葉を飲みこみ、なのは達はそれぞれの感情を乗せそのまだまだ小さなその背中を見つめた。
不安。期待。疑念。好奇。
様々な感情が入り混じる視線をその背に感じながらも、意にも介さずラディは歩き出す。
相対するは、詳細不明のスライムの群れ、数十。
対するラディの手にあるのは、ただの
牛乳瓶
(
ゴミ
)
ただ一つ。
得体の知れない数十もの異形を前に、
牛乳瓶
(
ゴミ
)
一つを片手に彼は臆することなくその無謀ともいえる歩を進める。
敵の蠢く岸辺へ続く斜面、その入り口に足を踏み入れた彼は、
牛乳瓶
(
ゴミ
)
を持つ右手を自身の前へと伸ばし、そして――力を籠めて粉々に握りつぶした。
大きなもの、小さなもの、辛うじて原型を留めた飲み口に底。
それぞれの破片が、色の褪せた月の光を反射しながら宙を舞い、重力に引かれ地へと落ちていく。
いっそ幻想的とも言えるその光景の中、ラディオン・メイフィルスはその光景には目もくれず、
詠唱
(
ことば
)
を紡いだ。
「
固定
(
バインド
)
」
宙を舞い地面へと落ちようとしていたガラスの破片はすべて、彼の言葉とともに現出した青白色の輪により宙へと縫いつけられる。
「
魔力付与
(
エンチャント
)
」
続けて紡がれた
詠唱
(
ことば
)
に、ただのガラス片だった物に魔力の灯が燈る。
その数、約半数。
失敗したか――否、彼の表情を見れば、それが失敗などではなく、意図的なものだと分かる。
「
装填
(
セット
)
」
そして今度は、全ての破片を魔力の環が包み、その前に徐々にその半径を縮めた環が、円錐状にその先端をスライム達に向けて展開される。
バインドではない。それは物体に推力を持たせるための魔法。
眼前の敵を撃ち抜くための――砲台。
そして?―彼の口から、最後の
詠唱
(
ことば
)
が吐き出される。
「
発射
(
ファイア
)
」
ラディの最後の
詠唱
(
ことば
)
とともに破片を宙に留めていた輪は消滅し、砲台を形成する魔力環はその輝きを増し唸りを上げて凶弾を撃ち出した。
虚空を切り裂く凶弾は彼が冷たく見据える異形のスライム達に殺到し、その身体を散々に引き裂いていく。
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