未練-リグレット-
[3/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
足取りで歩くと、彼の元に同じアルビオン兵が駆け寄ってきた。
「ヘンリー。上官からのご命令だ」
「なんだ…?」
「空賊から接収したあの船を監視しろとさ。俺も一緒だ」
「そうか…わかった」
ヘンリーの表情が決して晴れやかなものではないことを察したのか、彼は顔を覗き込んできた。
「お前最近疲れてんのか?居眠りするなよ?」
背中を軽く叩いた後、彼はその場から去っていった。
ヘンリーの前から去っていったその兵は、兵の寄宿舎ではなく、街のとある場所に建てられた一軒家だった。外から見ると、どれは古すぎず、かといって新しすぎるというわけでもない、何の変哲も無い家だ。
監視の目が無いかの確認をする侵入者のごとく辺りをきょろきょろ見渡した後、彼はその家に入った。
その屋内は、中は真っ暗で光が差し込んでくることはほとんど無かった。まるで幽霊屋敷のような怪しいものだった。
兵士は階段を駆け上がると、二階にある、とある一室に入る。そこもカーテンで外の景色がさえぎられた真っ暗な場所だった。あるのはベッドと、壁に沿えて立っている、本がぎっしり詰まった本棚のみ。特に何も面白いものが無いように見える。しかし彼は急に、本棚の前に立つと、本棚を扉側の方角へと手動でずらす。
すると、どうだろう。壁に、扉があるではないか。棚の後ろに扉を隠していたのだ。
兵士はその扉を開くと、扉の向こうには下の階へ続く深い奈落のような階段がある。彼はそこを降りていく。
深く、深く…その下へ続く階段を下りて行く。
すると、奥にたどり着くと同時に、彼の足が音響効果で響く。
そこは、さらに奥へと続く洞窟だった。その奥にさらに向かっていく。
暗い一本道を進んだ果てに、またもう一つ扉が設置されていた。扉をたたく兵士。すると、奥の方から声が聞こえてきた。
「合言葉は?」
「『自由の心』」
兵のその答えに応じて、扉がカチャリと音を立てて開かれた。彼が扉の向こうの部屋に入ると、蝋燭の光のみで照らされた空間が広がっていた。
「…船の様子はどうじゃった?」
暗闇の奥から、壮年の男と思われる声の質問が兵士に投げかけられる。
「ロサイスの船着き場に、監視付きで繋がれてたぜ」
アルビオン兵の男はその問いに対してそう答えた。いや、そもそもこの男、本当にアルビオン兵なのだろうか。今の彼の態度は正式な教練を受けた兵にしては、どこか粗暴さを持っている。
「レコンキスタの奴ら、わしらの船を侵略用の戦艦として利用するつもりじゃろうな…」
「相変わらず人の腸を煮え繰り返すのがうまい奴らよのぉ」
そしてさらに二人、別の壮年の男たちの声が聞こえてくる。中央に座る男のそばに、控えるように立っていた。
どこかひょうきんにも聞こえるその言葉には、怒りが込められていた。
「監視体制はどれほどだったかわか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ