月下に咲く薔薇 22.
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冬の恵みたる陽光を背負いつつ、こうも暖かさや清潔感と無縁な人物画を仕立て上げられる男も珍しい。アイムの作り笑顔が、室内に差し込む光と反発しあっているではないか。
廃墟や汚れた町並みでも、日の光が照らすと少しは見栄えがする。見る者が、そこに始まるもの、再生されてゆくものを感じ取ろうとするからなのだろう。たとえ光量の少ない真冬の斜光でも、陽光の効果は変わらない。
しかしこの男は、自ら光の恵みを拒絶し、死と破壊をもたらす者である事を表情に出していた。左の口端を微妙に歪め、敢えてそのまま取り繕わずにいる。顔の右半分が完璧に成形された澄まし顔なだけに、配慮を欠くたった1カ所の歪みはクロウ達に強烈な不快感をもたらした。
「昨日の今日だ。疲労困憊が顔に出てるぜ。アイム」
言いながら、背後にいるロックオンに部屋を出るよう左手首を軽く翻す。
今、応援を頼まずしていつ頼むのか、という高レベルの緊急事態だ。隻眼の男が未だ背後にいるので、不思議に思いながらも仕種で念を押す。
「残念でしたね。ロックオン・ストラトスは、光に目を射貫かれてすぐには動けないようですよ」
感情の沸騰と共に、クロウの背筋を悪寒が貫いた。
アイムは、サーシェスの操るガンダムスローネツヴァイとZEXISの戦闘を近くから全て見届けている。その為、デュナメスの受けたダメージがガンダムマイスターにも及んでいた事、それがロックオンから何を奪い去ってしまったのかを知っているのだ。
「さては狙ってやがったのか!?」
思わず激高するクロウの肩を、後ろからロックオンが掴んだ。
「落ち着け。奴のペースに飲まれるな」クロウの肩をぐっと後ろに引いたかと思いきや、彼の右手が離れる。実物を捉える視野の差はどうあれ、今のロックオンの方が感情の抑制がきいているのは間違いない。「で、まんまと誘いに乗っちまった俺達だが、ここで騒いで人を呼んだっていいんだぜ。俺達ZEXISは、事態を打開する方法に目途をつけた。わかるか? てめぇなんざ用無しなんだよ!」
「ほう…」口の描く線は変える事なく、アイムの声音だけが怒気を孕む。「大した自信ですね。ランカ・リーの歌とνガンダムの併用コンタクト。なかなか斬新な発想ではあるようですが、私がそれについて知らないとでも思っていたのですか?」
流石に、クロウばかりかロックオンまでもが同時に絶句した。
何故、アイムに筒抜けなのだ。今朝、ジェフリーが提案し大塚が了承したばかりの計画ではないか。
内通者はあり得ない。ホランド達は、既にインペリウムと合流しているのだから。
「おや。揺れていますね。気になるのでしょう? 私がどのように情報を取得したのかが」
「ああ。興味は大有りさ」振幅の大きさを敢えて否定せず、クロウは光の中に立つ敵を睨みつけた。「Dフォルトの変質に俺達がど
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