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逆さの砂時計
孤独を歌う者 5
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覚。

「私は私です。かつてはアリア信仰で女神アリアを崇めていた神父であり、今は、愛する女性との約束を果たす為、もう一度ロザリアと向き合う為に、他のすべてを捨ててここまで来た、ただのわがままで無職な人間の男です。名前はクロスツェル。他の何者でもありません。強いて答えるとしたら……
『彼女』から伝言を預かった天の御使い、とかですかね?」
「『彼女』?」

 首をひねる俺にクロスツェルは頷き、空を仰ぎながら、告げる。

「ごめんねえ。でも、それは自力で見つけ出して欲しいな。これから始まる世界のどこかにあると思うんだ。そうだ! 宝探しをしてみてよ。君が君を見つける瞬間を楽しみにしているよ。頑張ってね、私の鏡……だそうです」

「……!」

 これは、あの時聴こえなかった言葉の続き。
 刹那、記憶を駆け抜ける、俺自身の問いかけ。

『俺はこれから、どうすればいい?』

「はっ……なんだそれは。結局、『あれ』が一番、無責任じゃないか」

 マリアの器をアリアに預け、空いた右手で自分の額を覆う。

「そうですか? 私には、貴方(こども)の独り立ちを願う親心に聴こえましたよ」
「解ってる」

 『あれ』が俺の内に遺していた(げん)
 多分、今だからこそ、理解できる。

 だから……永遠に喪った者達に涙を流すのは、これが最後だ。



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