暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
孤独を歌う者 5
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 信仰心で力を高める仕組みを壊した。
 今後は信徒がどれだけ増えても、力の増幅はされない。

「……はい」

 アリアが頷いた瞬間、光る雪は完全に消えた。

 現状は一切変えないままで残す。
 こうしておけば、アリアは自分の過去と向き合い。
 世界を見守っている限り自分の過ちを受け止め続けることになるだろう。
 俺もアリアの嘆きを見届け、そうして『扉』達の怒りを受け止め続ける。

「『扉』のマリア。この器も、お前に返す。『鍵』のマリアが望んだ通り、『鍵』の意思は破壊した。今後お前には関わらないと『鍵』の意思に誓う。元に戻りたいなら戻すが」

 ブローチを両手に乗せて、じっと俺を見ていた『扉』のマリアは。
 しばらくの間アリアの様子を見て、それから、首を横に振った。

「いろいろと問題を放置しちゃうけど、仕方ないわね。アリア、貴女に私の本体を預けます。私はフィレス様に造ってもらったこの体があれば良いわ。どうしようもない何かが起きた時にだけ、私を呼び戻して。貴女ほどの力は無いけれど、何かの役には立つかも知れないわ。それに……」
「それに?」

 『扉』のマリアは、一旦言葉を切り。
 幼い自分の体を見下ろしてから俺を見て、半眼になる。

「守備範囲外でしょ?」

 ………………信用はされていないらしい。
 これも当然だな。
 だが。

「外見はどうでもいい」

 鼻で笑ってやったら、ひっ! と肩を竦めてフィレスの背中に隠れ。
 猫のように牙を剥いて、シャーッ! と威嚇してきた。

 なるほど。
 マリアにはこんな一面もあったのか。知らなかった。
 アルフリードの記憶にも無い表情だ。
 猫耳と仕草が妙に似合っていて、面白い。

「ならば俺もこの体をマリアとは別の空間に封じよう。一緒にしておくのは『鍵』の望みに反するからな」
「レゾ」

 心許ないと顔に書いたアリアを見下ろし。
 マリアの器と一緒に、腕の中に閉じ込める。

「俺はお前と共にある。必要があれば、いつでも呼べ」

 ともすれば、こうして二人を抱いていたのはアルフリードだった。
 その可能性を潰したのも俺だ。
 栓無い思考だが、考えないのも……違うのだろう。

「これで良いのか?」

 クロスツェルに目を向けても、微笑みは変わらない。
 自分で考えて決めろと言いたいらしい。
 真意を探ろうとその目を覗くが、ついさっきまで(だいだい)色に近く見えていた虹彩はもう、クロスツェルの金色に戻っている。
 しかし。

「最後にもう一度尋きたい。お前は、何者だ?」

 ロザリアが起こしてからのクロスツェルは、何かが違う。
 拭えない違和感がある。
 探ろうとしても、空気を掴むのに似て、空振る感
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