暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
孤独を歌う者 5
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
良いという意味ではありません。
 私が何の為に、貴方達と友好関係を築こうとしたと思っているんですか?
 人間基準の生物学に照らし合わせた場合、貴方達はまだ死んでませんし、死んで終わらせるとか、最悪すぎて吐き気がします。
 貴方達の行為によって、世界はもう滅茶苦茶にされていますし、なによりアリアを産ませて産んで放置した挙げ句利用して「はい、さよなら」って、人間的な考え方では、そういうのを『外道』って言うんですよ。
 知ってますか? 知ってますよね。
 数千年もの間ずっと、全世界を傍観していたんですから。
 その上「諦めましたごめんなさい。死ねば良いんですよね、さようなら」とか、自己陶酔(とうすい)も甚だしい自分勝手極まりない結論を赤の他人や実の子供に押し付けるのはやめてくれませんか。
 育児放棄に、人格否定に、存在否定。
 どこまで有権者(おや)としての責任に(ふた)をすれば気が済むんですか。
 生物は、玩具や食事があれば勝手に育つってわけじゃないんですよ。
 過去を大切にするのは結構。過去に犯した罪なら罰は背負って当然です。
 ですが、それを加害者の死で(あがな)えると思うのは、感情的かつ即物的にしてあまりにも愚かしい。浅はかだし、傲慢にもほどがある。
 そんなことで気が済むのは、むしろ加害者である貴方達だけでしょう。
 現実逃避という卑劣な手段で被害者から目を逸らさないでいただきたい。
 貴方達は命が尽きる瞬間まで生きて生きて生きて生きて、その間ずっと、被害者達に罵詈雑言を浴びせかけられ続けるんです。
 被害者達の怒りをぶつける標的として、永久に存在し続けるんです。
 もちろん、反論も反撃も許されませんよ。
 友人は得られるでしょう。でも、心地好い居場所はどこにもありません。
 助けを求めたって友人も誰も助けないし、求めることすら許されません。
 精一杯、喪失感と無力感と不信感と孤独に打ちひしがれてください。
 それらはすべて、貴方達が被害者に与えたものですから。
 死が苦痛の対価とか、生命を舐めるのも大概にしてくださいね。
 本当に腹立たしい。
 生も死も救いなんかじゃないんですよ。
 未来を託すとか、貴方達に都合が良すぎる責任転嫁は迷惑極まりないのでお断りします。
 自分の行動の結果は自分で受け止め、責任は自分で取りなさい。
 ……ああ、長すぎて頭に入ってきませんか?
 では、もっと解りやすく、簡潔にまとめましょう」

 アリア以外の呆気に取られた視線が集まる中、クロスツェルは笑みを深め

「『生きて』」

 マリアの記憶に刻まれたアルフリードの最後の笑顔が……喪われた筈の、太陽ほどに眩しい金色の笑顔が、クロスツェルの穏やかな笑みに重なった。

「お前は……誰だ?」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ