最終話:八神切嗣
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くの人で行えばいい」
その場限りの単純な計算では10の為に1を切り捨てるべきだろう。
しかし、そのやり方では最後には誰も居なくなるだけだ。
そうではなく、誰か一人でも目の前の人を救う。その場では一人しか救えないだろう。
だが、その一人が自分のように誰かを救いたいと願えば今度は別の誰かが救われる。
その繰り返しだ。
救われた人が誰かを救っていけば、いつかは全てを救える日が来るかもしれない。
何の現実性もない夢見物語だろう。現実はそんなに上手くはいかない。
だとしても、現実は無慈悲ではない。衛宮切嗣という男が証明している。
誰かを救いたいと願う者は必ず生まれるのだと。
「……それが、おとんのやりたいこと?」
「うん。やっぱり変なことかな?」
「ううん。素敵な夢やと思うよ」
「そっか、良かった」
父娘は穏やかな笑顔を浮かべて笑いあう。
騎士達もその周りを優しく囲む家族として笑いあう。
この小さな世界こそが切嗣が心の底から望んでいた世界かもしれない。
だが、しかし。切嗣はここから離れていく。
心に宿る希望の種を世界に広めるために。
「シグナム、シャマル、ヴィータ、ザフィーラ。君達にも伝えたいことがあるんだ」
「謝罪は受け付けてねーからな」
「ははは、この期に及んで許してもらおうなんて思ってないよ」
ヴィータの棘がありながらも優しい言葉に笑う切嗣。
こんなに清々しく笑ったのはいつ以来だろうと思うがそんなことはどうでもよかった。
「はやてを頼むよ」
「はい、我らの命は主はやてを守るために」
「それから―――ありがとう」
どこか救われたような顔で告げられた感謝の言葉に思わず瞳が潤むシャマル。
シグナムは深々と頭を下げその言葉を受け取る。
ヴィータは瞳をこすって涙を押し隠そうとする。
ザフィーラは無言で拳を握り溢れ出す感情を抑え込む。
「それから、はやて」
「うん」
「風邪をひかないように。悩み事を溜め込まないように。体には気を付けるように。それから……」
「おとん、そんなこと言われんでも分かっとるよ。というか、私としてはおとんの方が心配なんやけど」
「ははは、それもそうか。なら、僕から言うことは一つだけだよ」
苦笑い気味に突っ込まれ、頭を掻いて笑う切嗣。
そのままはやての前に行き、少し戸惑うような仕草を見せてからその体を抱きしめる。
親が子を愛する。どこまでも慈愛に満ちた最後の抱擁かわす。
「幸せになってね、父さんとの約束だよ」
その言葉に堪えていた涙腺が壊れ、涙が再び零れ始めるはやて。
そんなはやての背中を優しく叩きながら切嗣はあやし続ける。
彼はこの娘に救われた。光の天使によって
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