最終話:八神切嗣
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以前の願いと変わらない。でも、少しだけ変わった。以前は数で助ける人間を選択していた。
しかし、これからは違う。目の前にいる人間を救っていく。
後先など考えない。そもそも、未来のことなど神でもなければ分からないのだ。
ただの人間である自分は今救える人々を全力で救っていけば良かったのだ。
「助けられた人の笑顔が見たいんだ。少しでも多くの人を笑顔にしたい」
「それが償うことになるん?」
「僕には償うなんて高尚なことなんてできない。そもそも、過去は帰ってこない。だから、今助けられる人を助けていく。償いは必死に生き抜いて地獄に落ちたときに閻魔様が決めてくれるさ」
ただ、ひたすらに懸命に目の前の人達を助けていく。
後ろ向きに失った人達に詫び続けてもその人達は決して帰ってこない。
なら、前向きに命尽きるまで誰かを救い続けよう。
失った者達以上に今を生きるものが幸せになれるように。
もしも償うことができるのならそれが唯一許されたことだろう。
「誰かを救いたいという願いは間違っていなかった。ただ方法が間違っていたんだ。
救いたいなら助けて救えばよかったんだ」
今までやってきたことに比べれば後のことをまるで考えない自己満足。
その場限りの何の計画性もない愚かな行動。だが、誰かを殺すよりも遥かに尊い行為。
殺しでは誰も笑顔にできなかった。でも、ほんの少し助けるだけで人を笑顔にできた。
「愚かな行為だと思う。でも、その愚かさこそが本当に―――大切なものだったんだ」
一人殺せば終わった戦いにこれからは全員を救うまで挑まなくてはならない。
その間に多くの者が死んでいくだろう。人は彼を愚かと罵るだろう。
だが、彼は気づいた。人間に必要なのは冷徹な数の計算ではなく温かい希望なのだと。
笑顔があれば、希望があれば人はどんな荒野からでも立ち上がって歩いて行ける。
だからこそ人類は今まで決して滅びることなく命を繋ぐことができたのだ。
そして、立ち上がった者達の中から新たな希望が生み出されるだろう。
「僕一人で世界を変えようなんて考えたからいけなかったんだ。人が後ろに繋げることで世界を変えてきたことなんて当たり前のように知っていたはずなのにね」
争いのない恒久的に平和な世界。衛宮切嗣一人ではそもそも不可能だったのだ。
切嗣は希望の種をまき、その花を咲かしてさらに希望を広めていけば良かったのだ。
例え、衛宮切嗣が志半ばで倒れようともその芽吹いた種がある限り希望は失われない。
別の誰かが遺志を受け継ぎ希望をさらに広げていく。
何度踏み荒らされようとも。何度焼き払われようとも。希望を絶やさない。
「僕でダメなら別の人でいい。一人で意固地にならずに時間をかけて多
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