二十八話:旅の終わり、新たな旅へ
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意思を尊重するに止める。
もしもの時は自分達が支えればいいのだと硬く決意しながらであるが。
「はい、シャマルです。すいません、石田先生……え? そ、そうですか。すいません」
石田に繋がるや否や開口一番に謝り始めるシャマルであったがハトが豆鉄砲で撃たれたような顔になる。
そして、すぐに若干へこんだような顔になりまた謝り始める。
何事を言われたのだろうかと不思議そうに自分を見る家族に電話を切って伝え始める。
「外泊許可は昨日の内にお父さんがもらっていたみたいです……」
「そうだったのか……ここは助かったと言うべきだろうか」
「でも、そのせいで私がおっちょこちょいだと笑われて……ううぅ」
シャマルのことだからうっかり忘れていたのだろうと石田に笑われたことにへこむ。
しかし、そんなシャマルを慰められる者はいなかった。
全員が確かにシャマルならやりかねないと思うが故に。
そんな空気を変えるためにはやてが話題の転換を図る。
「まあ、病院にはもうちょいゆっくりしてから行くとして。おとんはどうなったん?」
はやてが切嗣の行方について聞いた瞬間にピクリと騎士達の肩が動く。
切嗣は殺された。その相手に対しての恨みが心の中にないわけではない。
しかし、はやてが落ち着くまでの間は隠し通すと決めた以上はそういった感情もまた、隠し通していた。
「……それが、まだ見つかっていないようです」
「そっか……早よ、帰ってこんかな」
寂しそうに呟くはやての顔にシグナムは心が引き裂かれそうになる。
衛宮切嗣は殺されても全く憎めない行為を今まで行ってきたのだろう。
実際に自分たちが行われた行動だけでも十分にそれだけのことをされた。
だとしても、家族として殺されることを許容できるかといえばそんなことはない。
例え、殺された相手に非があろうともそれが大切な者であれば全く恨まないということができない。それは人間として当然の感情だろう。
「あ、私お茶淹れてきます」
切嗣のことから話題を逸らすためにお茶を淹れにキッチンへと向かうシャマル。
その後姿を見送りながらはやては何となしに事情を察していた。
恐らくはもう切嗣は帰ってくることはないのだろうと考えていた。
そんな時、チャイムが鳴らされる。
「はーい、今出ます」
「主、私が代わりに出ましょうか」
「ええよ、今はジッとしとるよりも動きたい気分なんよ」
「……分かりました」
それは何か別のことをして悲しいことから考えを離したいということ。
言葉の裏に隠された主の気持ちに気づき引き下がるシグナム。
そんなシグナムに微笑みながらはやては車椅子を動かし玄関へと向かう。
「はい、どちらさまでしょうか――
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