九十六 消し去れない過去
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それに適応したのが、風影の息子であり、未だに砂隠れの住人多くに畏怖されている我愛羅だったのだ。
尾獣を宿す兵器と自らの命の安全性を天秤に掛けた結果、彼らは命を選んだらしかった。
テマリとカンクロウの反論もむなしく、強制的に我愛羅をたった独りで木ノ葉へ派遣する上層部。
この理不尽極まりない行いを、しかしながら我愛羅はあえて承諾した。
それはひとえに、自分が犯した過去の罪を理解しているからだった。
何の為に存在し、生きているのか。
その理由を知りたくて殺戮を繰り返した。自分の為だけに闘い、己のみを愛して生きた。
全てをねじ伏せ、圧倒し、そしてその命を狩り取ってきた。
それを素晴らしい世界だと信じて疑わなかったかつての自分が犯した罪は、決して消える事は無い。
どんなに嘆いても過去は変えられない。どんなに後悔しても過去は消えない。
もっとも砂隠れの上層部が我愛羅を使節に任命した理由の一つは、無事に里へ帰還した場合、我愛羅へ対する皆の恐怖が少しでも和らぐだろうと考慮した上である。
五体満足で自里に戻って来るという事は、他里の長に認められたと同義。そうなれば、今の我愛羅はもう以前の我愛羅とは違うと皆が理解してくれるはずだ、という期待を抱いた故の使者任命だったが、流石の我愛羅もそこまでは気づけなかった。
こうして、姉兄の制止を振り切って木ノ葉へ赴いた我愛羅は、木ノ葉に着いて早々、この度火影の座に就いた綱手という女性に幾つかの質問を投げ掛けられた。
ある程度死の覚悟もあった我愛羅は、予想外の展開に困惑しながらも率直に答えた。すると綱手は、今の我愛羅に昔のような殺意などが一切無い事に逸早く気づいたらしい。
無防備にも火影室へ招き入れられ、次いで人払いまでした彼女は、戸惑う我愛羅を前に、真剣な表情で最後に問うた。
「父親の…――『風影』の跡を継ぐ気は無いか?」
それは我愛羅にとって、青天の霹靂であり、夢物語のようなものだった。
同時に蘇るのは、心の片隅でずっと引っ掛かっていた言葉。
『君は影に生きるべきではない。影を背負う器だ』
以前、うずまきナルトと対峙した荒野で、事も無げに告げられた一言。
あの時は、ただの冗談だと思っていた。けれど、今は…。
かつて言われた、ナルトからの言葉が後押しとなって、我愛羅は綱手からの条件を呑んだ。
どんなに後悔しても過去は消えない。どんなに嘆いても過去は変えられない。
だが、これから先の未来なら――――?
何の為に存在し、生きているのか。
その問いに、「俺は俺以外の存在を全て殺す為に存在している」とかつて狸の子が言った。
けれど今や、「俺は俺
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