九十六 消し去れない過去
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ったザクが苦々しげに顔を顰める。
その視線をやはり無表情で受け流す少年の名を、ナルはようやく口にした。
「が、我愛羅…?」
愕然とする彼女にちらりと視線を遣って、ザクと同じく突然乱入した少年――我愛羅は一歩前に出た。さりげなくナルを背に隠す。
その様はまるで、大切なモノを守るような仕草だった。
片や大蛇丸の部下、片や『木ノ葉崩し』にてサスケ・ナルと闘った相手。
敵か味方か判断が難しい二人の少年を、サスケとナルは警戒心を露に睨んだ。
砂隠れが木ノ葉と同盟を結んだのは周知の事実だが、『木ノ葉崩し』では音についてたのも事実。即ち、どちらの人間もそう簡単に信用出来る相手ではない。
もっともザクに至っては、先ほどサスケに告げた言葉からもやはり大蛇丸の部下である事は間違いない。
問題は…―――。
疑惑の眼で見つめてくるサスケとナルの視線を、我愛羅は真っ向から見返した。相変わらず無表情のまま、おもむろに双眸を閉ざす。
脳裏に浮かぶのは、五代目火影たる綱手との対談。
かつて化け物と畏怖されてきた少年―――我愛羅。
彼は自分が存在する理由を、自分が生きる意味を、自分以外の存在を殺す事で実感していた。それが間違いだと気づけたのは、似た境遇の波風ナルとの闘いが切っ掛けだった。
『木ノ葉崩し』の一件以来、少しずつ周囲に心を開いていった我愛羅を、姉兄であるテマリとカンクロウは微笑ましげに見守った。
内心どこか腫物に触るような扱いをしていたバキを始め、恐怖ばかりを覚えていた砂の忍び達も、次第に我愛羅を認めていった。
しかしながら、一度起こした過去の過ちはそう簡単に償えるものではない。
今でこそ落ち着きを取り戻した我愛羅だが、『木ノ葉崩し』以前は非常に情緒不安定だった。
だからだろうか。
心を入れ替えたような我愛羅の急な変化に、砂隠れの里人の大半は戸惑いを隠せないようだった。同じく上層部も、そんな我愛羅を持て余しがちであり、その結果が今回任命された使者という役回り。
要は、五代目火影就任における慶賀の使節に、我愛羅は選ばれたのである。
砂隠れの里・上層部にて決議されたコレは表向き、同盟国同士友好を深める為の親善使節だ。だがその一方、『木ノ葉崩し』の恨みで殺されても文句は言えない立場である。
何故ならば、たとえ木ノ葉までの道中で殺害されたとしても、殺した相手が木ノ葉なのか、はたまた別里の者か、或いは砂隠れ自身なのかも判断出来ないからだ。
そもそも他里へ送りつける使者には、ある程度の地位が必要不可欠。火影就任の慶賀使節なら猶更だ。
つまりは火影と対坐しても失礼じゃない立場。加えてそれ相応の実力を持ち合わせ、且つ、仮に殺されても自里にとって損害を被らない人物。
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