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渦巻く滄海 紅き空 【上】
九十六 消し去れない過去
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びゅうびゅうと唸る風の音が、酷く耳障りだった。

「…本当に…行くのか…」

巻き上がった砂塵に雑ざる、相手の身を心底案じた声音。
視界を覆う砂煙の向こう。何度目かの問い掛けは、物言わぬ砂に遮られる。

「何もお前が行かなくとも…ッ」
「上層部の奴らが勝手に決めたことじゃん!アイツらはお前を…ッ」
姉に加勢するように、兄もまた声を荒立てる。
猶も言い募ろうとする二人の反論を弟は黙って聞いていた。その端々に懸念の色が感じ取られ、不意に立ち止まる。

砂嵐にも拘らず、しっかりとした足取りで歩き始めていた少年は振り返らずに答えた。
その返答には足取りと同じく、揺るぎない強き意志が窺えた。

「もう決まったことだ…」


そう一言告げて、少年は――我愛羅は木ノ葉に向けて歩みを進めた。
それは折しも、サスケ里抜けから三日ほど前の出来事だった。











絶え間なく落ちゆく渓流。
轟然たる水音を立て続ける滝は『終末の谷』に一度たりとも静寂を訪れさせない。

しかしながら驚愕するあまり、ナルとサスケには滝音など全く耳に入らなかった。
思いもよらぬ闖入者の正体に息を呑む。
「「お、お前は……」」

サスケとナル、それぞれの背後に出現した新たなる忍び。
共に眼を見張るナルとサスケが酷似した表情を浮かべる一方、乱入者たる彼らの表情は対照的だった。
ナルの背後に現れた人物が終始無言且つ無表情であるのに反し、サスケの後ろの人間はどこか不遜な態度で佇んでいる。
しかしながらどちらの人間も、サスケとナルに何かしら因縁のある人物だった。

「……お前は…確か、」
背後を振り仰ぎ、訝しげに眉を顰めるサスケの顔を見て、少年がうっそりと眼を細める。
「俺の右腕…まさか忘れたとは言わねぇよなァ?……――うちはサスケ」

今は無き右腕。明らかに義手であるソレをひらひらと揺らして、少年――ザクは嗤った。



中忍第二試験の『死の森』にて、巻物争奪戦の際にサスケは相手の右腕を折った事がある。それが当時、大蛇丸に命じられ、サスケを襲った音忍の一人――ザクだった。
その後、予選試合で対戦相手のシノに敗れ、その右腕を失ったザクだが、彼はサスケを未だに恨んでいた。
何故ならば右腕の件が無ければ、シノとの試合を本調子で迎えられたかもしれないのだ。加えて、大蛇丸のお気に入りというのも気に触る。


「けどまぁ…今じゃ同じ穴の狢ってわけだ。歓迎すんぜ、サスケさんよぉ?」
大蛇丸の命令でアマル同様サスケを迎えに来たザクは、にやにやと嫌味な笑みを放った直後、その表情を一変させた。
「もっとも、……まさかコイツまでいるとは思わなかったがな…」


以前、中忍本試験前に襲撃し、返り討ちに遭
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