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第一章
Secret base 〜君がくれたもの〜
「ねえ」
「何?」
僕は彼に言われて。それでだった。
彼の方に顔を向けた。夏のお祭りの後の夜の帰り道。
僕達は一緒に帰っていた。その時に。
僕に不意に声をかけてきたから。それでだった。
彼に顔を向けて尋ねた。
「何かあるの?」
「これからどうするのかな」
こう。彼は夜空を見上げながら僕に尋ねてきた。空は夜空で星が瞬いてる。その星がとても奇麗な、夏の夜のことだった。
彼は僕にこう言ってきた。
「これからね」
「将来のこと?」
「うん、君はどうするの?」
「僕は。そうだなあ」
少し考えてから。僕は答えた。
「あれかな、やっぱりね」
「サラリーマンとか?」
「それかな」
平凡に。それかと考えて答えた。
「お父さんは学校の先生だからそれかも知れないし」
「学校の先生なんだ」
「何か。子供に教えるのって駄目かも知れないけれど」
それでも漠然と考えていた。
「それでもね」
「いいと思うよ」
「いいんだ」
「学校の先生もね。人の役に立つ仕事じゃない」
「子供を教えるから」
「確かにとんでもない先生もいるけれど」
「いるね、確かに」
実際に僕達の学校にもいた。そういう先生は。
とにかく何かあると無茶苦茶な暴力を振るって下品で傲慢な先生だ。そうした先生がいて。僕達は皆その先生を嫌っていた。その先生のことも。
僕達は思いながら。そうして話した。
「あの先生みたいにはなったら駄目だよね」
「そこは気をつけてね」
「人の役に立つ先生になるんだね」
「それだったらいいと思うよ」
「人の役に立つ先生に」
「そう、なればね」
「そうだね」
僕も。自然に。
彼の言葉に頷いた。これからのことを。
それでだった。今度は。
僕から彼に尋ねた。同じことを。
「君はどうかな」
「僕かい?」
「うん、君は将来何になりたいのかな」
「そうだね。僕もね」
「君も?」
「人の役に立つ仕事に就きたいね」
こう僕に言ってきた。彼も。
「やっぱり」
「人の為に」
「僕はそうだな」
彼も夜空を見上げながら僕に言ってくる。その夜空が。
今日はやけに澄んでいた。その空を見ながら話していく。
星がやけに奇麗で。その星だけで忘れられなかった。けれどそれ以上に。
彼とのこの話がだ。忘れられないことになろうとしていた。
その中でだ。彼は僕に言ってきた。
「消防員かな」
「消防署なんだ」
「それになりたいんだ」
「また危険な仕事だね」
「危険だね。それでもね」
どうかとだ。彼は話してくる。
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