第九十一話
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まう。そう言ってくれるとありがたいが、リズの言っている通りにこの焼きそばに需要があるのが少し驚きでもある。それはレプラコーンの少年の方も同様だったらしく、感極まったように焼きそばを食べていた。
「まあ……いいならいいか」
小さくそう呟くと、今度こそ売り切った証として完売の証を表示させる。ふと気になって生首の方に視線を向けると、砂浜の中から脱出しようともがいているところで。そんな俺の視線をノームの青年も追って、初めてレコンの生首の存在に気づいたらしく。
「ああ、砂に埋まるのもやってみたかったんですよねぇ。タル、あとで埋めてくれないかい?」
「土妖精でしょ、自分でやりな……あっ!」
焼きそばを食べながらそんなマイペースな会話をしている最中、俺は鉄板の後片付けなどをしていたが、メガネのレプラコーンの少年が驚きの声をあげた。何があったと顔を上げてみると、レプラコーンの少年の視線が、机の上にあったクナイに向けられていた。先程、リーファに貸していたものを、ストレージにしまうのを忘れていたらしい。
「コレ……誰が作ったんです!?」
「えーっと……どっちだ……ああ、自分だ」
リズが作った物か自分が作った物か。リズの助手を務めるにあたって鍛冶スキルの上がった俺は、自身のクナイの作成もしていたが……やはり、リズが作る物には及ばない。どちらも形状は同じようなものだが、やはりどこか『違う』のだ――念のため自分が作った物か確認して告げると、次の瞬間メガネの少年は何を思ったか、目にも止まらぬ速さで俺の手を握っていた。
「……し、師匠!」
「……は?」
突如として告げられた謎の文言に、相手が客だということも忘れて疑問符を発してしまう。
「いきなり何言ってるのさ、タル」
「だってテッチ、凄いんだよこのクナイ! そもそもこのクナイっていう形状自体!」
食べかけの焼きそばを店舗に置きながら、タル、と呼ばれたメガネのレプラコーンは興奮して熱弁する。確かに投げナイフではなくクナイの形状にしているのは、あの浮遊城にいた時から使いやすさを優先してのことだが、最初にリズに制作を頼んだ時はボヤかれたものだ。そんな風に懐かしんでいると、二人の会話はまだ続いていて。
「初対面の人に何を言ってるの。さっさと焼きそば食べて、そろそろユウキたちの応援に行かないと怒られるよ」
「……『ユウキ』?」
テッチと呼ばれた糸目のノームの言葉に、生首もといレコンが反応した。会話を続けている二人を置いておいて、何やら意味深に呟いたレコンの方に話しかけた。
「知り合いか?」
「ううん、違うけど……さっきの凄い人だかりの剣舞してた子と、同じ名前で」
インプの女の子だったな――とレコンは言葉を続けた。
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