第九十一話
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の前に巨大なノーム妖精が現れていた。
「すいません、焼きそばまだ売ってますか?」
「あー……二玉くらいなら」
「うーん……ずっと泳ぎっぱなしだし……それでお願いします」
海に視線を落としながら、糸目のノームは悩んでいるポーズを見せて注文する。ずっと泳ぎっぱなしの仲間でもいるのか、と思いながら、焼きそばの元を鉄板の上に置く。ソースをぶちまけながらさいばしで絡めていくと、料理スキルが自動的に焼きそばを完成させていく。
「いやー……仮想空間とはいえ、海って浜辺でもいいものですねぇ……」
どこかノンビリとした糸目のノームの青年が、海を見ながらしみじみと語り出す。そこにずっと泳ぎっぱなしの仲間の姿を見つけたのか、おーい、と手を大きく降り始める。
「サラマンダーの筈なんですけど、大丈夫なんですかねぇ、水の中。ところで、あなたは……?」
「ああ、レプラコーンです。鍛冶妖精」
他の妖精たちの種族とは異なって、髪や服の色に特徴がないレプラコーンは、よく何の妖精か訪ねられる。特に今はただの水着姿と、特徴がはっきりとした種族でないと分からない。
「レプラコーンですか、ウチのギルドにもいますよ。女の人の水着が刺激が強すぎるみたいで、物陰にいますけど」
糸目のノームはそう言いながらも、によによと笑いを堪えるようにしながら、休憩室のようになっている海の家を指差した。確かにそちらに視線を移してみると、シルフかと見紛うような小柄なメガネをかけた妖精が、どこか挙動不審になっている。
「水着、見に行かなくていいんで?」
「いやぁ、自分は参加しているギルドの仲間の付き添いですから。あなたもそうでしょう?」
「ギルドじゃないですが。友達です」
そういえばふと、仲間うちでギルドなど作ろうか――などという話になった時、アスナがあまり乗り気ではなかったので、立ち消えになったことを思いす。自分もあのデスゲームで懲り懲りだと、特に話を蒸し返すことはしていない……と、そんなことを考えているうちに、焼きそばが完成する。
「へいお待ち」
「どうも。おーい、出来たよー」
糸目の青年が海の家に残っていたレプラコーンの仲間を呼んでいる間に、焼きそばをきっちり二等分に皿に載せながら、箸を用意して糸目の青年に渡す。青年は周囲をキョロキョロと見渡しながら来たレプラコーンの少年に片方を渡し、礼儀正しくいただきます、とこちらに笑いかける。
「……うん、海の味がする」
「いや、あんまり料理スキルは高くなくて……」
「いいえ! 美味い焼きそばより、海の焼きそばが食べたくて来たんですよ。むしろ、ありがたいです」
青年の砂色のくせっ毛が潮風に揺れるのを見ながら、自分もつい癖で髪の毛を撫でてし
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