第九十一話
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振りかぶって放ったクナイは、プロ野球選手のレーザービームのように一直線に向かっていく。自分の投げるより遥かに威力の高いソレは、もちろん何もない空間を横切り――
「ひゃぁっ!」
――何もない空間から悲鳴が起きた。それでリーファが何を狙っていたのか把握すると、俺は呆れて自然と顔を手で覆っていた。クナイはそのまま近くの木にあわや貫通するかという勢いで突き刺さり、今まで何もなかった空間には小柄なシルフの少年が腰を抜かしていた。
「……レコン!」
「ちょっと待ってリーファちゃんこれには理」
彼にそれ以上の弁解の暇は与えられなかった。いくらどんな理由があろうと、得意の隠蔽スキルで女性を付きまとっていては、現行犯でストーカー扱いされても何の言い訳は出来ない。……このALOにログインするより以前、このメンバーが合流した喫茶店で男女比に危機感を感じた自分は、リーファが来るなら来るだろう、くらいの気持ちでレコンもパーティーに誘っていた。急な誘いだったため、海に行くことは伝えてそのままだったが……まさかこんなことになるなんて。
「誰だい?」
「んー? そりゃもちろん、リーファの彼――」
メンバーの中で唯一レコンのことを知らないルクスに、リズが面白がって嘘八百を伝えようとした瞬間、貸していたクナイがリーファから返却される――机を割らんという勢いで、机の中心にクナイが突き刺ささりながら。……レコンと一悶着起こしながらこの威力とコントロールでは、もしかして自分よりリーファの方が上手いのではないだろうか……
「……そう、リーファのトモダチよトモダチー」
「そ、そうか。仲が良いようで羨ましいよ」
「羨ましい、ですか……?」
俺が地味にクナイの扱いにヘコんでいる最中。若干棒読み気なリズの紹介に苦笑しながら、ルクスはリーファとレコンの攻防戦――ただし一方的――を、本当に羨ましそうに笑顔で眺めていた。同じものを見ていたシリカは顔が引きつっていたが。
そして数分後――《リズベット焼きそば店》の前には、レコンの生首だけが野ざらしで置かれていた。
「酷いよリーファちゃん! こんなにしなくてもいいじゃないか!」
……もちろん打ち首ということではなく、レコンは生首以外を砂浜に埋められている状態、ということだった。まるで身動きが取れないらしく、首だけが元気に事故主張を繰り返していた。
「うっさい! サメに喰わされないだけ感謝しなさい!」
「サメに喰われれば死に戻り出来るじゃないか! これは動けないんだって!」
「なるほど、そういう発想が」
「ショウキさん、そこ関心するところじゃないです……」
サメに喰われれば死に戻り出来るから、身動きが出来ないよりよっぽどマシ――ネット
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