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中秋の名月をみて思い出す
中秋の名月 秋の夜
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2010年 10月、月が京都の街を仄かに明るく照らし出す未明の宵

携帯が鳴った。
「もしもし、雄希さん?」
「どうしたん海王?」
「雄希さん、旅行しいひん?」
いきなりそのような電話が金曜日の夜の学校帰りに後輩から何の唐突もなくかかってくれば、慌てない先輩はいない。
「いきなり、どないしたん?」
「俺な、500円貯金で10万円貯めてん。それでどっかいこ。」
「どんだけ貯金好きなんや。」
どっかってどこや?やなんで今?など気持ちは整理できてないままだったが、なぜか落ち着き払って、あいつなら500円で10万貯めそうやな、と分析する自分もいて余計気持ちはごっちゃになるばかりだった。
「ていうかどっかってどこよ?」
「うーん」
決めてないんかい、と突っ込みたくなったが答えが出るまで待った。
「俺、梅アイス食べたいから、大宰府いこう」
「大宰府?」
ここは京都の山科である。遠く異郷の地に自分は思いを馳せる。だが実感がわかない。
「お前、どんだけ計画性ないねん!?」
「ええやん、俺そういうの好きやで。無計画っていうの。」
振り回されるこっちの身になれと思ったが、そこは常日頃後輩を引きずりまわしている自分が言えたことではなかったので言わなかった。
自分は少し考える。状況を飲み込み、冷静に判断する。ここは行くか、行かないかではない、後輩はなぜか分からないがどこかしらに行きたいと言ってる。自分はそれに対しどう態度を示すべきか。足蹴にしてしまうべきなのか、それとも向き合うべきなのか。
二つに一つだったが最終的にはもう自分でも分からなかった。
「いいよ。いこう」
そういうと海王は声に明るみを含ませて
「ゆうきさんやったら言うと思ったわ」
と呆気らかんと応えた。隣でそれまで一緒に帰路を共にしていた二つ年下の辰巳寛史は笑いが止まらないようで「意味わかんねえ」と呆れた顔をしていた。
「9時に京都駅集合な、俺それまでに準備するし」
「おお、俺はそのまんまやけどな」
そうして自分は自宅に電話し、友人の家に泊まると言い、京都駅に向かうことにした。
「ほんまに行くん?」
隣にいた辰巳は真顔で聞いてくる。普段感情を面に出さないタイプのやつだったので内心呆れているんだろうはと思った。
「うん、いくで」
「そうか・・」
自分はまだ半分覚悟はなかったがそう答えた。そんな自分も自分で不思議だと思ったが、なぜか気持ちは澄んでいた。
「お前は普通に帰れよ」
「帰るわ。そんなん。なんで付いていかなあかんねん」
ハハハっと自分は豪胆に笑ってみせたが自分が正直何を言っているか分からなかった。もしかしたら今の状況は自分の思っている以上のものかもしれない。でもやっぱり考えても無駄だと思った。死ぬ気になればこの世の不条理くらい乗り越えられる。まし
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