孤独を歌う者 4
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
私が私になって数年間、いろんな場所を渡り歩いてて気付いたんだが……裕福な街でも寂れた下町でも、人間の生活にはそれなりに共通する規則性ってものがあるらしい。
朝になると水を汲みに行ったり、洗濯物を陽光に当てて乾かすだろ？
で、陽が沈む頃になると何をするにも不便だから、大体の奴らは寝床に戻りたがる。
暗くなったほうが好都合な輩も居るけど、そいつらはそいつらでまた別の規則性を持って動いてる。
まぁ、この辺はどうでもいいんだ。
要は、同じような時間帯に同じような行動を繰り返しちゃう奴らが居るって話さ。
そう……主婦が朝方を中心に忙しく動き回るように。職人が毎日同じ時間に仕込みを始めるように。
私が見てきた限りじゃ、多くの子供は何故か、昼過ぎから夜の間に大人を困らせる言動をしたがるんだよ。多分、子供の精神面が一番活性化してて、親しい相手と一番多く触れ合う頃だからってのもあるんだろう。
この時間帯に外をてけてけ歩いてると、何処からともなく飛んで来るのが
「どうしてこういう事するの、この子は！ 駄目って言ってるでしょ！？ 何回言えばわかるの！！」
この、定型文的お決まりの叱り文句。
殆ど毎日それぞれ別の母親が、よくもこれだけ一言一句違わぬ叱り方をできるもんだと感心してたよ。
実際に怒られてる場面も見掛けたりするんだけど……まぁ、大体の子供は「ああ。またやるぞ、こいつ」って、傍目に判るんだよな。
なんでか？
だって、その母親
どうして？ って訊いといて、答えを聴こうとしてないもん。
子供達は明らかに納得いかない顔して、親が見てない場所に苛立ちをぶつけてる。
「駄目だから駄目」が親の主張なら「何が駄目？ 何で駄目？」が子供の疑問なんだろう。だから繰り返して繰り返して、何が駄目なのか周りの反応から探ってるのかもな。
大人にしてみれば、自分で考えさせる事が重要って方針もあんだろ？
でもさ。
本当に、子供に考える機会を与えてんの？
頭ごなしにどうして？ とか訊いても、子供は言い出し難そうだったけど……一回、「へぇー」って思った遣り取りがあったんだ。
「楽しかった？」
「うん」
「どんな風に楽しかった？」
「えっとね……」
「……そっかぁ。じゃあ、あなたがそれを誰かにやられたら、どう思う？」
「……やだ！」
「嫌なんだね。……私も嫌だなぁ。私もあなたと同じで、それをされたら凄く嫌だなぁ。悲しいなぁ……」
「じゃあ、もう、しない！」
「ありがとう！ 嬉しいな。あなたがそうしてくれると、私は凄く嬉しい！」
……つっても、子供の頭じゃ悪気無くても無意識に同じ事を繰り返しそうだけど。
あの母親はきっと、その都度「それをされると悲しい
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除