孤独を歌う者 4
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
私が私になって数年間、いろんな場所を渡り歩いてて気付いたんだが。
そこが裕福な街でも寂れた下町でも、人間の生活にはそれなりに共通する規則性ってものがあるらしい。
朝になると水を汲みに行ったり、洗濯物を陽光に当てて乾かすだろ?
陽が沈む頃になると何をするにも不便だから、大抵は寝床に戻りたがる。
暗くなったほうが好都合な輩もいるけど。
そいつらはそいつらで、また別の規則性を持って動いてる。
まあ、この辺はどうでもいいんだ。
要は、同じような時間に同じような行動をくり返す奴らがいるって話さ。
そう。主婦が朝方を中心に忙しく動き回るように。
職人が毎日、同じ時間に仕込みを始めるように。
私が見てきた限りじゃ、多くの子供は何故か、昼過ぎから夜の間に大人を困らせる言動をしたがるんだよ。
多分、子供の精神面が一番活性化してて、親しい相手と一番多く触れ合う頃合いだからってのもあるんだろう。
この時間帯に外をてけてけ歩いてると、どこからともなく飛んでくるのが
「どうしてこういうことするの、この子は! ダメって言ってるでしょ!? 何回言えばわかるの!!」
この、定型文的お決まりの叱り文句。
ほとんど毎日、それぞれ別の母親が。
よくもこれだけ一言一句違わぬ怒鳴り方をできるもんだと感心してたよ。
実際に怒られてる場面も見かけたりするんだけど……まあ、大体の子供は「ああ。またやるぞ、こいつ」って、傍目に判るんだよな。
なんでか?
だって、その母親
どうして? って訊いといて、答えを聴こうとしてないもん。
子供達は明らかに納得いかないって顔して、親が見てない場所に苛立ちをぶつけてる。
『ダメだからダメ』が親の主張なら。
『何がダメ? どうしてダメ?』が、子供の疑問なんだろう。
だから、何度でも同じことをくり返してくり返して、何がダメなのかを、周りの反応から探ってるのかもな。
大人にしてみれば、自分で考えさせることが重要って方針もあんだろ?
でもさ。
本当に、子供に考える機会を与えてんの?
頭ごなしにどうして? とか訊いても、子供は答えにくそうだったけど。
一度だけ、「へぇー」って思ったやり取りがあったんだ。
「楽しかった?」
「うん」
「どんな風に楽しかった?」
「えっとね……」
「……そっかあ。じゃあ、あなたがそれを誰かにやられたら、どう思う?」
「……やだ!」
「なら、私がそれをあなたにしたら? 私が別の誰かにそれをされてたら、どう思う?」
「やだ! ぜったい、やだあっ!」
「嫌なんだね
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ