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逆さの砂時計
孤独を歌う者 4
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 それでも私達は、世界を破壊する魔王として、貴方を警戒していた。

 どこの誰が。
 抜き身の剣を構えながら、敵意が滲む表情で迫りくる相手を……
 その手を、言葉を、好意的に受け入れられるというのかしらね?

 貴方が私達に牙を剥くのは当然だった。
 あの時も、そうさせたのは私達だ。

 私達のほうが、間違えていた。

「そうよ、レゾネクト。これが私の答え。貴方が何故、何の為に、今日まで生きてきたのか。何故私達と戦ったのか。それはね。
『勇者一行を殺す為』よ」

 勇者一行は、あの時に死んだ。
 アルフリードも、ウェルスも、コーネリアも。
 そして私も、レゾネクトとアリアの契約を知って狂った瞬間に、死んだ。
 ここに居るのは亡霊。
 過去に生きていた、ただそれだけの、(しかばね)

「死を迎えた者に未来は無いの。子供達の幸福を願って祈って消えるのよ。死者である私達は、あの世界に居てはいけない。だから貴方の手で壊して。終わらせて。過去は過去に。未来は子供達へ託して。私達の望みを叶えて、レゾネクト」

 レゾネクトは、幼い子供だった。
 言葉よりも何よりも、まずは態度で示すべきだったのに。

 アルフリードだけが、目の前に居る『レゾネクト』本人を見ていたのね。
 だけど、噂に聴いた『魔王』とその所業を見ていた私達のせいで。
 私のせいで、最後の最後に間違えてしまった。

「マリア……!」

 レゾネクトが私を抱きしめる。
 私に笑って欲しいと、壊したくないと願ってくれたのは。
 誰かじゃなくて、きっと貴方自身ね。

 ごめんなさい、レゾネクト。
 アルフリードの強さが私達にもあれば。
 貴方も私達の仲間になれていたかも知れない。

 でも、それは過去の話。
 私達は貴方に殺されたの。
 事実は事実のまま、貴方に映す。

「さようなら、魔王レゾネクト」

 せめて間違えてしまった分だけは、貴方の想いに心から応えようと思う。
 貴方が望んでくれた本当の笑顔を……遺すわ。

「ありがとう」



「母さん!」

 冗談だろ!?
 母さんは死んでなんかない!
 今、この瞬間も生きてるじゃないか!
 せっかく会えたのに、殺されてたまるかよ!!

「母さ……!」
「ロザリア!」

 空間を跳ぼうとして、弾かれた。
 吹っ飛びそうになった体を、クロスツェルの腕が引っ張って支える。
 レゾネクトが、移動を妨害してる。私達の介入を拒絶してる。

 なんで。
 なんでだよ!?
 私達(むすめ)を利用してでも、母さんに笑って欲しかったんじゃないのかよ!?

「レゾネクト!」

 私の声に応えるように、若い姿のレゾネクトが神殿の中
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