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歌集「春雪花」
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 山も枯れ

  草木も枯れて

   陰落とし

 虚しく眺む

    君のなき里



 山も生気を失い、草や木々も枯れて、もはや影だけが横たわる侘しい時節…。

 そんな侘しき景色を見渡せば、ふと…彼との思い出が頭を過る…。

 あぁ、あの時はこんな話をしたな…あぁ、この時はこんなことを話したな…なんて、過去ばかりを振り返ってしまう…。

 君がいなくなったこの町…ただ、淋しい風が吹き去る…。



 吐く息の

  白く立ちたる

   冬の夜の

 枯れ野を照らす

      上弦の月



 夜半に外へ出ると、吐く息が白く立ち上り、寒さに震えるほどだ…。

 雪が降らずとも冬は確かにやって来ている…そう思い辺りを見回すと、殺風景な田畑が浮かび上がっていた。

 見上げれば鮮やかな月が光を放ち、淋しい山里を照していた…。

 この月を…彼は見てるだろうか?

 そうは思ってみたが、風情なぞなかろう彼を想い、そっと…笑みを零した…。




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