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足りぬ足りぬは
2部分:第二章
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第二章

「確かにそうして仕入れて自分達で造ったらね」
「お金はかからないな」
「ああ、かからないわ」
 実際にそうだった。仕入れの金はゼロだ。しかも自分達で造ればその分の金もかからない。それにだった。
 部長はだ。こんなことも言うのであった。
「部員全員で朝も昼もやるからな」
「えっ、夕方だけじゃないんですか」
「朝も昼もですか」
「勿論休日もなしだ」
 土曜も日曜もだ。作業をするというのだ。
「そうして造っていくぞ」
「何か大変なことになってきたよな」
「朝も昼もって」
「それで夕方は練習か」
「御芝居の」
「練習あってこその部活だぞ」
 部長は言い切る。
「それでどうして夕方の練習をだ」
「けれど朝と昼も部活ですよね」
「お昼休みも」
「そうだ、舞台とその装飾を創る」
 部費がないからだ。部長が使い過ぎたその部費をだというのだ。
 その部費がないならないでやっていく、彼は話してだった。
 自分自身で動く。彼は真っ先に朝に来てだ。率先して動いていた。
 トンカチを叩き鋸で切ってだ。そうしていってだった。 
 舞台を築いていく。その中でだ。
 勿論夕方も部活に出ている。しかも部員達を強引に徴用してだ。
「いいか、絶対に来い」
「だからって放送までかけることないじゃないですか」
「放送室を占領して」
「来ない奴が出て来るのは予想できるからな」
 それでだ。放送をかけて呼ぶというのだ。
「そうしているんだよ」
「ううん、何か軍隊みたいですね」
「そんな感じですけれど」
「放送部って軍隊だったんですか?」
「帝国陸軍だ」
 よりによってだ。鉄の軍律を誇るその軍だというのだ。
「それなんだよ、この放送部は」
「そこで肯定ですか」
「むしろ誇らしげに言うし」
「そうだよ。陸軍が嫌なら海軍だ」
 どちらにしても鬼の如き軍律の軍である。
「それでどうだ。月月火水木金金だ」
「つまりずっと部活ですか」
「それなんですね」
「練習に制限はないんだ」
 実際にだ。部活動の稽古は毎日夜遅くまで続けられている。顧問の先生や用務員のおじさんがいい加減にしろと言うまで毎日部員に稽古をさせている。それがこの部長のやり方なのだ。
「それを考えると海軍だな、うちは」
「予算滅茶苦茶に使ってるしね」
 副部長が部長に冷静に突っ込みを入れる。
「陸軍は財政については厳しかったから」
「そうか。栄光の帝国海軍か」
「褒めてないわよ」
 そのことはだ。副部長は完全に否定した。
「全く。ちょっとやり過ぎよ」
「いえ、ちょっとじゃないですから」
「部長脚本も書いて演技指導もして監督も演出もしてますし」
 していないのはだ。主演位であった。
「それで一切仕切ってそれですから」

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