第一章 目覚めるその力
第二話 遺産の村
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だ。
「う〜ん…………確かに暑いね。……一通り終わったら扇子か何かでも使おうかなー……」
手で扇いで風を得ようとするジーノ。勿論得られる風は雀の涙の様なものだ。
言うまでもないことだが、砂漠や火山といった灼熱には遠く及ばない。どれだけ過大評価しても精々密林程度だろう。住む分には申し分無い土地だ。しかし人は快適を求める生き物である。二人も例外ではなかった。
因みに、先述の通りこの場所は盆地に位置するのだが、そのために四季は明確になっている。つまり、冬は寒い。きっとこの二人は、寒冷期にはまた愚痴を漏らすのだろう。ただし、愚痴で済むからこそ微笑ましくもあるのだ。今度は雪山よりはずっとマシと一蹴出来てしまうのだから。
そうして二人で愚痴をこぼしながらも、片手間の内に全ての荷物が下ろされた。しかしすぐに飛行船が出発することはなかった。飛行船の修繕のため、暫くの間、村に停泊するからである。
しかし、二人はその事に対する興味は持ち合わせていない。小耳に挟んだ程度で、二人にとっての話題になることもなかった。
彼らにとって重要なことは、そんなただの物的損害よりも、寒暖差が大きいと言われるこの辺りの気候が面倒だということと、荷物を荷車に乗せ直し、これから住む住居に運び込まなければならないのが面倒だということだけだ。その次は村長やギルドへの挨拶、村の全体図の把握や、これから利用するであろう狩場の下見などなど──そして漸く狩猟、調査、研究に移ることが出来る。彼らにとってそれらの準備は、はっきり言うと煩わしい事この上ない。
怠ってはいけないことなのは自覚している。そして二人は何度かこのような辺境の村に派遣されたことがある。そこでこの作業をこれまでも抜かりなくやってきて、そして今回もきっと、しっかりとこなすのだろう。それでも面倒なことに変わりはないのだ。
だから二人は荷物の移動を会話の片手間にする。そうでもしないとつまらなくて仕方がないから。
「寒暖差がデカいらしいから寒冷期用の物も沢山持ってきたんだけどさ、ちょっと多すぎたかなぁ」
リューガが先に口を開く。少々多めの荷物を運ぶのに少し嫌気が差してきたらしい。
「多い分には良いんじゃないか?」
「つっても嵩張るからなぁ。他にも沢山荷物があるのにこれだとちょっとな……よいしょっと」
荷車に荷物を置き、言葉を返してきたジーノにそう言いながら、リューガはまた別の荷物を再び持ち上げて、荷車へと運んでいく。
「こういう荷物運びの時はめんどくせーっつーか……っと!」
荷車に荷物が乱暴に下ろされる。ドンッという大きな音が鳴った。
「もう少し丁寧にやろうよ……」
ジーノは余りにも乱暴な置き方に困惑したが、リューガはそんなことは露知らず。それからジーノに、
「お前はどれくらい持ってきたんだ
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