一章
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月の姿の見えない夜。貧しい街では明かりも少なく、黒で身を包んだ男の姿は朧気にしか見えない。彼が笑いながらティナ持ちを呼んでも、その異様な笑顔を見たものは誰もいない。闇という仮面のなかで、彼の表情はわからないのだ。
今もただ、痛みにうめく役人たちには目もくれずに愛銃の手入れを行っているが、その表情はみえない。役人のリーダーらしきものは、見えないからこそ大きな勘違いをしていた。
やつは心の底では怯えている、と。
だから落ち着こうと武器の手入れを行う。力のあるものに触れていれば、人の気は休まるものだ。役人はそう考えた
第一……ティナ持ちを恐れないわけがねぇ……
役人は勝利を確信しにたりと笑った。
ティナ持ち。それはティナの力を得た者のことを指す。ティナとはマーテルから恵まれる能力を与える結晶のことだ。時折天から落とされ、人に力を与える。神からの恵みと称されるティナは持ち主を選んでいるのか、落ちる時も場所もまったく定まってはいない。また、ティナの与える力も統一性はなかった。
ただ、大きくタイプが別れている
自身の体が強化されるもの、強化型
新たな何かの力を得るもの、能力型
ある別の姿を得るもの、変形型
この3つのタイプである。
どれも人を超えた力であり、誰もが欲しがるものだ。軍に抑えられ何処の市場にも出回らないが、価値からすれば人の人生が買えるほどの金額である。それほど魅力的であり、だからこそ所有者も少ない
しかし、神の恵みとはいえど、大きな落とし穴もある。
それは、ティナの力を得るまで誰にもその能力の質がわからないこと。そしてもうひとつが、力を得るには代償を払わねばならないことだ。
ティナは人に力を与え、人の何かを奪う
あるものは視力を、あるものは食を。奪われるものさえ未知で、小さなものから大きなものまであった。かつて神ノ木マーテルを発見した冒険者のリーダーは、風の力をもつティナを有しており、その代償は免疫であったという。彼はどんな菌にも感染し病を起こした。結果として小さなかすり傷ひとつで、人生に幕を閉じることになったのだ。
ティナを持てば、与えて奪うもの。決して完璧ではない
「お前も終わりだな、よそ者!」
「あーあ。せっかくおとなしく待ってやってんのにそういう口の聞き方をするか。言葉の使い方を知らねぇなら一言も喋らずじっとしてろ。俺の暇潰しに付き合わされたいか?」
誰もが押し黙る。男の威圧感は半端なものではなかった。ティナ持ちでもなければ兵士でもない自分達が勝てるはずのない相手。男の発する何かはそう思わされた
「……きたか」
男は小さく呟く。すると、何処からか豪快な足音がひびき、そして彼が現れた
ティナ持ち
背丈は男をはるかに超し、体格差は比べ
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