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魔王の友を持つ魔王
§68 最恐にして最強
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申し訳ありません。破魔の王よ」

「偉大なる王、貴方様に栄光あれ」

 王の執事の心からの謝罪と、貴公子の祈りと。

「----」

 黎斗は、何も答えず姿を消した。かつてない強敵に、気を張り巡らせながら。



○○○



 歩く。こつ、こつ、こつ、と。伽藍とした廊下に黎斗の足音が響いて消える。どうせ気づいている筈だ。流浪の守護により気配は感じ取れないだろうが、無数の”視線”は誤魔化せない。絵に描かれた人物が、動物が、侵入者の姿を把握しているのだから。絵の中からじろじろと見てくる無遠慮な視線。絵と絵の間を移動して、黎斗に中指を立てる者もいる。ゆえに、隠す気などない。著名な画家によって命を吹き込まれたかのような名画の数々。それらが本当に動くなんて、こんな事態でもなければじっくり見たいものだ。だけど、今はそんな考えも命取りになる。神経を張りつめて、油断せずに、しかして自然体で。絵画の森を抜けて、黎斗は気配の方へ歩く。

「で。君が噂の悪魔か」

 美術館の最奥で、有名な絵画を眺める男に語りかける。

「……ふむ。君も先ほど来た金髪の男の同類、神殺しか。私を殺すかい?」

 角を生やした悪魔然とした相貌。着込んだスーツと相まって高貴な悪魔なのだろうと思わせる。神話に明るくない黎斗には、その姿から彼の悪魔の出自を探ることは出来なかった。もとより素性の把握などする気もない。相手は短期間でドニを圧倒するまさに怪物。気合いを入れてかかるほかない。僅か数分で神殺しを敗走させる存在など、黎斗の長きにわたる人生でも今まで一度も目にしたことはない。

「そうだねー。どうしよっか。都市で人が殺し合いをしている。貴方の影響? ならばやむなしかな。止めてくれるなら僕としては戦う必要性を感じないんだけどね。っーか正直、戦いたくない」

 ドニ相手に圧勝するような怪物と戦いたい、なんていうのはバトルジャンキーに任せれば良いのだ。ヴォバンとか護堂とか。飄々とした口調を装いながら、唇が渇いていることに気づく。気づけただけまだ冷静か。

「戦いたくない、とは珍しいな。悲しいことだがそれは無理だ。なぜなら私は人間が大嫌いなのだからね。人間なんて滅べばいい」

「過激だね……」

 交渉と呼べるほどのものでもないが、話し合いはやっぱり無理だった。ならばここから戦うのみ。人間嫌い。美術館に縁がある悪魔らしき存在。人を狂わせる。これだけヒントがあれば絞り込めそうだ。護堂とかとは案外相性が良い相手なのかもしれない。戦士の権能でなんとかしてもらうか。そんな逃避を脳裏でしつつ。剣を取り出す。価値ある絵画を壊すのも忍びないし、接近戦でどうにかするのが最善だろう。自分の考えに失笑。緊張していても、いざ戦うとなれば周囲への配慮を考えているうちに
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