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魔王の友を持つ魔王
§68 最恐にして最強
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どうぞ」

「……つまんないなー。ここは「俺の獲物だッ!!」って言ってやり合うとこじゃないの?」

 熱血展開ならアリだろう。だけど残念ながら、そこまで意地を張る必要性が黎斗には見受けられなかった。

「自分そんな趣味ないんで。任せた」

「ホント淡泊だねぇ。まー騒ぎの中心に行けば神様いるかな」

 適材適所だ。戦いたいヤツに戦ってもらうにこしたことはない。そんな黎斗にとって、ドニの発言は渡りに船だ。あっさりとドニを見送って、

「よし寝よう」

 布団に潜ろうとしてエルにひっぱたかれる。

「馬鹿なこと言ってないで暴徒鎮圧に行きますよマスター」

「えーアンドレア卿にお願いすればいいじゃん……」

 知ってた。結局ドニが行っても黎斗は黎斗ですることがあるのだ。権能による影響ということは、人間が行ってもミイラ取りがミイラになって終わってしまう。暴走するアンドレアとか厄介な事この上ない。ドニのストッパーがいなくなる。黎斗はドニのストッパーになる気などない。阿呆のお守りは三馬鹿だけで限界だ。三馬鹿すらも満足に出来ている気がしないし。

「しゃーないか」

 引きこもれるのはいつの日だ、そう思って出ようとしたら。

「黎斗、頼む……ヤツは美術館にいる。僕の代わりに、倒してくれ……」

 早い、という感想よりも。帰還してきた、という事実に驚く。

「はぁ!!?」

 誰が予想できるだろう。ドニが、サルバトーレ・ドニが、戦闘から逃げ帰ってくるなど。

あれ(・・)はダメだ。僕じゃ勝てない」

「ドニ、お前……」

 恐怖に顔を歪めてドニが呻く。ドニの戦意喪失という事態にアンドレアまでもが呆然とする。

「……どんな権能を」

使うの、と尋ねようとした矢先に爆音が響く。ドニの顔が青褪める。

「うわああああ!!!!」

 ドニが発狂したかのように叫びだす。銀に光った腕が屋敷を一瞬で破壊する。そのまま彼方へ駆け出すドニ。なんだこれは。いったい何が起きている。

「……恵那、アンドレア卿。ドニをお願いします。エル、一応翠蓮と護堂に連絡を」

 この様子、相手はドニに完勝した、と言ってよいだろう。そんな相手に勝てる保証などない。最悪の事態を想定する必要があるだろう。むざむざと負ける気はないけれど。

「マスター!?」

「れーとさん!?」

「大丈夫。最悪情報だけでも持ち帰る」

 エルと恵那は動揺した。だって彼女たちにとって初めての黎斗の”弱気”な発言なのだから。何世紀も共にしたエルですら聞いたことはない。

「……御武運を、マイマスター」

「……我らの王よ、御身に勝利を」

 恭しく、しかし想いを込めて。眷属と巫女は勝利を願い。


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