第二百三十三話 本能寺の変その八
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「雑です」
「確かにな」
「十兵衛殿ならです」
「既にじゃな」
「火矢を放たれ。兵を雪崩れ込ませることもです」
「ないな」
「あの方ならば」
こう信長にも言うのだった。
「そこが妙です」
「そうじゃな」
こうした話をしながら戦っていた、本能寺において。
そしてだった、それは二条城でもだった。
信忠は慶次と可児に左右を護られ飛騨者達と共に戦っていた。二条城を囲んでいるがそれでもである。
二条城の傍の近衛邸を見てだ、信忠は叔父の長益に話した。
「十兵衛ならばです」
「うむ、近衛邸に何としても入ってな」
「あの邸からも攻めていましたが」
「それがないな」
「若し近衛邸から攻められたなら」
その時はというのだ。
「我等はより危うかったですが」
「それをしてこぬな」
「明智家には二人能臣がおります」
斎藤と秀満のことだ。
「あの二人でもです」
「こうした采配は取らぬな」
「兵は明智の兵です」
彼等の周りも桔梗の家紋が描かれた旗が囲んでいる。その旗こそが紛れもなく明智の兵であるという証だ。
「しかしです」
「采配は違うな」
「どう見ても」
「いや、兵の動きも」
「采配のせいかです」
慶次と可児も戦いつつ言う。
「悪く、です」
「思ったよりも楽です」
「うむ、火矢を使って来ぬな」
このことをだ、信忠も言う。
「それにじゃ」
「はい、ただ兵が無駄に突っ込んで来るだけで」
「攻め方に芸がありませぬ」
「ただ数を頼むだけ」
「そんな攻め方ですな」
「妙じゃな、しかし兵の数は多い」
信忠はこのことは間違いないとした。
そしてだ、こう周りに言うのだった。
「このままでは押し切られるわ」
「では、ですな」
「ここは」
「やがて火矢も来る」
このことは間違いないとして、というのだ。
「だからじゃ」
「それではですな」
「火矢が来ましたら」
「その時に、ですな」
「城が燃えた時に」
「程よくじゃ」
信忠も見ていた、戦の流れを。
「それが来た時にな」
「はい、まず殿がです」
「お逃げ下さい」
「茶器は全て持って行くぞ」
長益はこのことは絶対とした、このことは茶好きどころか茶狂いとさえ言われている彼ならではのことである。
「何よりもな」
「やはり叔父上はそちらですか」
「そうじゃ、どの茶器も天下の逸品ぞ」
二条城に持って来たそれもというのだ。
「だからな」
「全て、ですな」
「持って逃げる」
このことは忘れないというのだ。
「よいな」
「では」
「うむ、とにかく兵の動きが悪い」
このことをだ、また言った長益だった。
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