第二百三十三話 本能寺の変その七
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「では殿、先にです」
「行くのじゃな」
「はい、そしてこの薙刀で」
「敵をか」
「切り倒していきます」
「頼むぞ、敵はわかっておるな」
「十兵衛殿ですね」
「あ奴じゃ。織田の兵と戦うのは気になるが」
それでもだった、信長も。
「そうも言っておれぬ」
「では」
「これより着替える、それではな」
「お待ちしています」
こう言ってだ、帰蝶は先に出た。そして。
信長は着替えに入った、すぐに自ら服を着替えてだった。
南蛮式の具足を着けマントの如き陣羽織を羽織り。
そのうえでだ、弓矢と槍を持ち出た。するとそこではもう明智の兵達が攻め込んで来てだった。幸村達が戦っていた。
幸村は両手にそれぞれ一本ずつ槍を持って戦っている、兼続は二本の刀を。そのうえで信長の姿を認めて言った。
「おお上様」
「来られましたか」
「ではです」
「これより」
「うむ、わしも戦うぞ」
こう言ってだ、自らだ。
弓矢を構えて矢を放つ、そして。
明智の兵の肩を射抜いてだ、周りの者達にこう言った。
「出来るだけ敵の兵を殺めるな」
「それよりもですな」
「傷付けよというのですな」
「十兵衛は己の兵を大事にする」
明智のこの気質を知っての言葉だ。
「傷付いた兵には無傷の兵を付けて手当をさせる」
「その分だけ戦う兵が減る」
「だからですな」
「そうじゃ、それでじゃ」
それ故にというのだ。
「出来るだけじゃ」
「兵を殺めずに」
「傷を付けるのですな」
「そしてじゃ」
それにというのだ。
「火矢も来る、矢を持っておる兵を特にじゃ」
「はい、そうした者をです」
「真っ先に退けております」
幸村と兼続もこう答える。
「十勇士達がそうしています」
「それに寺の屋根に弓矢の得意な者達をやりました」
そしてその者達がというのだ。
「そうして出来るだけ、ですな」
「時を稼ぐのですな」
「そうじゃ」
こう言うのだった。
「燃えることは避けられぬ、しかしな」
「出来るだけ時を稼ぐ」
「そうされますか」
「皆の者、暫く頼む」
二人だけでなく他の者達にもだ、信長は言った。
「その命わしに預けるのじゃ」
「承知」
「だからこそ我等もここにいます」
「上様と共に」
「戦いましょうぞ」
「よく言ってくれた、ではじゃ」
ここでまた矢を放った信長だった、それで明智の兵の右肩を射抜いた。
だが、だった。その兵には。
誰も駆け寄らなかった、信長はそれを見て言った。
「妙じゃな」
「はい、これは」
蘭丸も応える。
「十兵衛殿にしては」
「すぐに兵を向けてな」
「傷を負った兵の手当をさせますな」
「それがない」
だからだというのだ。
「これは妙じゃ」
「確かに」
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