6部分:第六章
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コの記事をそれぞれの手に持って話をしている。
「しかし」
「しかし。何ですか?」
「案外身近なところにいるものなのだな」
カンセコは記事を片手に怪訝な顔になっていた。
「有り得ないような集団が」
「見えない場所は意外と側にあるものですよ」
フランコはしたり顔でこうカンセコに告げた。その言葉と一緒に自分の席に座って偉そうに足を組んでからコーヒーを飲むのであった。ブラックである。
「それが下水道だったってことですよ、今回は」
「そういうものか」
「案外ですよ」
そして彼はまた言う。
「宇宙人も隠れているかも知れませんね」
「うちの普段の記事みたいにか」
「はい、その通りです」
半分笑っていて半分真剣な顔と声であった。
「ひょっとしたらですけれど」
「そうかもな。下水道に鰐や大蛇どころかカルト教団が隠れていた」
それは事実だ。事実を前にしてはどんなでまかせも薄れる。もっともその事実を実際よりも遥かに大きくして話すことはできるのだが。
「それを考えたら有り得るか」
「ひょっとしたらですけれどね」
「だとしたら俺達も本当のことを書いていることになる」
カンセコはここでおかしそうに笑ってみせた。
「でまかせを書くのが売りの俺達がな」
「だったらそれはそれでいいんじゃないですか?」
フランコは今度も半分笑っていて半分本気の顔であった。
「実際のところ何が真実で何がでまかせかなんてわかりませんよ」
「そうしたものかな」
「そうしたものですよ」
またこう言うのであった。
「世の中ってやつはね」
「でまかせも本当にでまかせかわからないか」
「嘘かも知れませんしね、本当に。ほら」
ここで彼はまた言ってみせる。
「嘘を嘘だって見抜ける人間じゃないと駄目だって言われるじゃないですか。そういうことですよ」
「結局はそれか」
「ええ。そういうものってことですね」
彼は軽い調子でカンセコに言うとコーヒーを片手に自分の記事を見る。そうしてその記事を見ながら惚れ惚れとした様子で笑うのであった。己の記事に。
下水道 完
2008・1・14
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