巻ノ二十二 徳川家康という男その七
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「徳川家は今や百万石を越えております」
「当家の十倍以上じゃな」
「その相手を侮るのは愚の骨頂ですな」
「その通りじゃ」
「しかも兵も強い」
清海も言う。
「まことに強いですな」
「そうじゃ、しかも将も多い」
優れた将がというのだ。
「ならば侮らず、よく知ることじゃ」
「徳川家を」
「敵を知り己を知ることじゃ」
このことが肝心だというのだった。
「何よりもな」
「さすれば百戦危うからず」
こう言ったのは筧だった。
「まさにですな」
「そういうことじゃ」
「しかし。妙ですな」
今度は海野が言った。
「尾張の兵は弱くて有名で」
「隣の三河はじゃな」
「強いとは。隣同士でこうまで違うとは」
「そうじゃな、確かに隣でも全く違う」
幸村は海野のその言葉に頷いた。
「これは尾張と三河だけではないな」
「ですな、甲斐と武蔵でも違いまする」
穴山は武田の領地と北条の領地を比べて述べた。
「隣同士でも」
「そうじゃな、相模と駿河にしてもな」
「左様ですな」
「それとです」
望月は町中を見回しつつこんなことを言った。
「この駿府は都や大坂程ではありませぬが色々なものが揃ってますな」
「果物も豊富じゃな」
幸村は店先のそれを見ていた。
「実に」
「蜜柑も」
「気候がよいので色々な果物も育つのですな」
伊佐は駿河のそのことから考えて述べた。
「蜜柑にしても」
「だからじゃな」
「果実も食するべきです」
伊佐は微笑み幸村にこうも述べた。
「口にすると甘さや酸っぱさで元気が出ます」
「そうじゃな、甘いものもな」
「実によいですな」
「その通りじゃな」
幸村も言う。
「果物もよい」
「蜜柑は身体によいとです」
由利も言う。
「言われていますし」
「ここは皆で食うか」
「よいですな」
根津も笑みを浮かべている、そのうえでの言葉だ。
「では今から」
「そうしようぞ」
こう話してだ、そしてだった。
幸村は家臣達を店に連れて行ってだ。そのうえでその蜜柑を買って店先に用意されている席に皆で座って口にした。その蜜柑の味はというと。
「これは」
「中々」
「いや、美味いですな」
「実に」
「そうじゃな」
幸村も食べてから言う。
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