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逆さの砂時計
孤独を歌う者 3
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なく興味で探ってみる。
 それを何度も繰り返して……気付いた。
 アリアはアルフリードに与えられた神々の祝福を継いでいる。
 マリアを通して伝わったのか?
 なら
 「アリアになら、アルフリードを呼び戻せる」
 そうだ。記憶の中でマリアはいつもアルフリードに笑っている。勇者が居れば、マリアはこんな風に笑うだろう。
 アルフリードを呼び戻す為には……


 「いやあぁぁあぁああーーッッッ!!」
 アリアとの契約がもうすぐ完遂するという時に、契約していた事とその目的を知ったマリアが……狂った。
 言葉もまともに話さない。怒りすら向けない。寝室を飛び出し、あらゆる所で布を裂き、装飾品を壊し、何度止めても自分自身を引っ掻いて傷付けて、王城内を叫びながら、壁に体当たりしながら、暴れ回る。
 その姿の何処にも、優しく微笑むマリアの面影は無い。
 「眠れ、マリア」
 だから……壊した。
 マリアの意思を。マリアの記憶を。
 全部壊して、眠らせた。
 「……マリア……」
 空っぽだ。
 暗闇の中の何処にも、俺が欲しいものは無い。
 暗闇も空っぽ。マリアも空っぽになった。
 抱き締めても求めても、何も感じない。
 ……寒い。
 寒くて寒くて……息苦しい。
 どうしてこんなに喉が引き攣るんだ。
 俺は何故……
 『来いよ。レゾネクト』
 アルフリード……
 『貴方の目に、美しいと感じるものは無かったの? 心地好いと感じる音は? 手当たり次第に壊して、その手に何か一つでも残ってる? 何も無いでしょう? 貴方が探している答えは、その手で掴みたいもの、包みたいものだったのよ』
 マリア……
 何も無い。
 抱き締めても、お前は此処に居ない。お前達は此処に居ない。
 ウェルスもコーネリアも、アルフリードも……マリアも居ない。誰も、笑わない。
 どうやらアリアも逃げたらしい。気配がぷつりと途絶えた。


 「……もう一度世界を見る、か……」
 アルフリード達の記憶を携え、アルフリード達に繋がる記憶を探しながら、アリアが継いだ俺の力を使って世界を見る。
 ただ、見る。
 アルフリード達が笑っていた場所。泣いていた場所。戦っていた場所。勇者一行の旅を辿って、遡って。なんでもない場所も観察して。
 行き着いたアルフリードの生まれ故郷は、人間同士の争いで姿を消していた。
 ……つまらない。
 なんて美しくて、つまらない世界。
 この世界にも、俺が欲しい答えは無かった。
 俺は何故、此処に居るんだ。
 「……お前達が居ない世界は、つまらないな」
 それでも此処は……莫迦みたいに笑うウェルスが。冷静に場を纏めるコーネリアが。子供みたいなアルフリードが。常に前向きであろうとしたマリアが。魔王の敵達が、護ろうと
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