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逆さの砂時計
孤独を歌う者 3
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る。
 他の男を思って俺を憎むお前は、認めない。
 絶対に認めない!
 「貴方だけは赦さない……赦すものか……ッ!」
 憎悪と拒絶のマリアを無理矢理押さえ付けて翼を完全に奪い取り、出て行く前よりもずっと激しく抱く。
 休む間も一切与えず、いつ体が壊れてもおかしくないほどに、強く強く強く強く。
 意識がある間は数秒も離さない。
 意識が無くても、腕の中に閉じ込めて離さない。長く長く長く……


 ……俺の中に、マリアが二人居る。
 仲間と笑い合う楽しそうなマリアと、泣きながら憎しみを編み続けるマリア。
 眠れば優しい微笑みを浮かべるマリアが。
 起きれば憤怒に喘ぐマリアが居る。
 腕の中で気を失っていてさえ、苦しげに眉を寄せて泣く。
 何故、こんなにも違っているのだろう?
 「……つまらない」
 涙を流す苦しそうな顔より、もっと違う表情が見たい。仲間に……アルフリードに見せる顔が見たい。
 アルフリードが居れば何か違うんだろうか。
 だが、アルフリードは……
 『……ない……』
 「?」
 『誰も居ない……どうして……』
 声がする。
 誰の声だ? 消えそうにか細い、声。
 『どうして私には誰も居ないの……? 寂しいよ……もう嫌だよぉ……』
 声を通して何かが見える。
 土を掘って被せただけの小さく簡易な墓の前で、子供が泣いている。
 ぼさぼさの白金髪に、涙で濡れた薄緑色の目。土で汚れた痩せ細っている手足。ボロボロの布切れを纏ったみすぼらしい容姿だが……何処かマリアに似てる。
 「……何故、泣く? 何が悲しい?」
 『!? え……何? だれ!?』
 「お前は、何だ?」
 視界の先に居る子供への問いに答えたのは
 「……アリ……ア……!?」
 気を失う寸前まで追い込んでいたマリアの、掠れた悲鳴。
 俺の声に驚いた子供は、墓の前から走って逃げた。
 「……「アリア」?」
 「ッ!!」
 咄嗟に口を押さえたマリアの顔色が、余計な事を口走ったと雄弁に語る。
 マリアに似た子供。俺に繋がった「アリア」。
 ……そうか。マリアが出て行った時に繋がった声。
 あれは
 「俺の血を分けた、お前の子供か」
 ひっ……と、マリアの喉が小さく鳴る。
 体がガタガタと震え、赤く腫れた目元を、新しい涙が絶え間無くなぞる。
 「やめ……、やめて……っ!」
 何も言っていないのに、マリアは首を振って俺を非難する。
 アリアに手を出すな。アリアは関係無い。アリアを巻き込むな。
 凄まじい形相で。頼りない力で。
 俺を殺そうと必死でもがく。
 「……つまらない、な」
 そんな顔はもう、見たくない。
 暴れるマリアを回復させないように抱き潰しては、記憶の中のマリアを見て、アリアの声と話し、何と
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