1話 最初で最後の幸福感(ユーフォリア)
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が無線で問いかけると、アーシャ・K(ケー)・東が正常に反応する。
『こちらレッド2』
「こちらの合図で発砲求む」
『了解』
敵戦車が一斉に2時の北方向へと動く。僕の今いる位置だ。
「こちらレッド1。敵戦車2時へ移動を確認。想定3分後に地雷地点に到達する。爆発と同時に合図をだす」
先ほど、戦闘前にしかけたものだ。
『こちらレッド2、了解』
無線からでもアーシャの緊張感が伝わってくる。
彼女は16歳という年齢なのに、狙撃の腕はかなりすごい。ただし、実戦経験が少ないため、今回の大掛かりな任務に緊張しているのだろう。
「レッド2。落ち着いて。目的は牽制。別に弾を当てなくても良いんだ。いくら対戦車ライフルと言っても、当たったって、こんなに離れてたら大したことないし、問題は敵に索敵をさせて囮になることだから。まぁ、囮になると言っても、すぐに離れてもらうから安心して」
優しい先輩をイメージして無線を送る。
『は、はい』
1台が地雷に引っかかった。
「コードレッド!発砲!」
僕らはライフルの引き金を引く。
僕の弾丸は戦車の砲塔をかすめ、地面にめり込む。アーシャの弾道は的確に1台の燃料タンクに当たり、爆発を起こし、大きな煙を上げた。地雷に引っかかり、履帯が外れた戦車からは搭乗員3人が修理のために出てきた。燃料タンクから発火している戦車は消火や、応急修理を行っているだろう。煙で先が見えづらいが、もう一台は履帯を180度回転させ、アーシャの方向へと向かうところが確認できる。
距離は1・5キロ。僕は弾を切り替え、スコープを覗く。スコープの中でも人は小さく見える。
僕は狙撃が苦手だ。大雑把な性格で、離れた位置から的を射る事に嫌悪を覚えるほどに下手くそだ。しかし人員が足りていないため、今回は狙撃をして、すぐに白兵戦を行えばいい。
「レッド2。応答せよ」
『こちらレッド2』
「こちらレッド1。敵戦車がレッド2の狙撃位置に移動開始」
『目視できます』
「即刻避難せよ」
『了解』
「コードイエロー。応答せよ」
イエローは軽トラックで援護や回収を行う部隊。後ろのトランクの屋根が開いているのでそこから無反動砲を打ち込む事がよくある。
『こちらイエロー1』
「こちらレッド1」
『対戦車砲弾を所持。いつでも攻撃できるわ』
「いや、レッド2を回収してくれ」
イエロー1ことミレーナ・ホイッスル。彼女は多少横暴で攻撃的な性格なため、非常に扱いが困難。しかも22で、僕より年上な所が…
『えー。いいじゃん!戦車と戦わせろよ!』
「文句言わないでくれよ。僕的には戦車を1台くらいは無傷で回収したいんでね」
『わあったよ。後でビールおごりな』
「ビールは高いから獨酒で
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