二十七話:終演
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はは! いいだろう。君の退職祝いだとでも思えば安いものだ」
「すぐに用意できるか?」
「君のレアスキルの研究の為にとっておいた“物”であればすぐに用意できるよ」
水面下で動き始める計画。
それは一人の男をこの世から消し去るための計画。
家族を守るために男が選んだ一つの選択。
「最後の処置をどうするかね? こちらでやっても構わないよ」
「いや、“自分”のことぐらい自分でやるさ」
「くく、そうかね。では、私は準備を始めるとしよう」
そう言ってすぐに研究室の奥に消えていこうとするスカリエッティだったが、ふと足を止めて振り返る。
何事かと怪訝そうに眉を顰める切嗣にスカリエッティは問いかける。
まるで、それが本当の前金だとでも言うように。
「一つ聞かせてもらってもいいかね。君が過去を否定されてもなお歩き続けようとする理由を」
「……何も変わらない。僕は誰かを救いたいだけだ」
仏頂面のまま返事を返す切嗣。その言葉は彼と始めて会った時の返答と変わらぬものだった。
だというのに、その声色はどこか満足しているかのような、答えを得たかのようだった。
そのことが解せずにスカリエッティはさらに問いを重ねる。
「ならば、何故今までの行いをやめるのだね? 今回は素晴らしい奇跡が起きたがそんなものなどただの偶然だと君は心の奥底では思っているはずだよ」
「そうだね。現実を見ればこれからも同じことを繰り返し続けるのが正しいのかもしれない」
「では、何故?」
「正しいことをするだけじゃ、人の心は救えないからだ」
ハッキリと目を見開き、宣言する切嗣に驚きを禁じ得なかった。
誰よりも心を押し殺し、効率だけを追い求めた機械のような男が心を語ったのだ。
衛宮切嗣は今まで数だけで選択をしてきた。人間を見ていなかった。
心を無視していた。例え、100人中1人を犠牲にして残りの99人を救ったとしても。
果たして、その99人全員がそこから先を立って歩いていけるのか?
数でみればただの1人だ。だが、人間としてみればその1人は誰かの子供で、誰かの孫で、誰かの親で、誰かの友人で、誰かの最愛の人なのだ。
そんな1人を奪われた者達は果たしてその先生きていけるのか? 希望を持てるのか?
答えは分からない。だが、一つだけ分かることは、人は心が死ねば生きてはいけないことだ。
例え命が助かっても、そこに希望がなければ、心が救われなければ真に救われたとは言えない。
「そのことに気づいた。だから……変えるんだ」
「なるほど……それが君の答えかね。くくく、安心したよ。全てを諦めたわけではなく、より難しい願いに変わったというわけだ」
より難しい願い。その言葉に切嗣は顔を伏せる。
そうだ。今
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