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ULTRASEVEN AX 〜太正櫻と赤き血潮の戦士〜
1-3 大帝国劇場のジン
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働き始めてまだ間もないが、マリアのことはまだほとんど知らないままだった。外見からしてなんでもこなせそうな女性だが…まだわからないことがおおい。ジンが、自分が何者なのか分からないことと同じように。
「映像に保存できたらいいんだけどね。映写機とかもあれば、いつでも見られるんだけど…」
「そうですねぇ…ぜひそうしたいんですけど、映写機って貴重だから勝手に使うことなんてできないんですよね」
「まぁ、いつかきっと見られるよ。待った分だけ、きっと数年先もしっかり記憶に刻まれ続けるだろうから」
マリアの演劇を見ることができずに少し残念そうな椿に、ジンは軽く慰みの言葉を向けた。
「あ、でも紅蘭さんなら作ってくれそうですね。その映像記録の機械」
椿の口から聞かない名前を耳にし、ジンは首を傾げた。
「コウラン?誰なの、その人。もしかして、その人も花組の人かい?」
「ええ、正確には花やしき支部に所属している人手で、本名は李紅蘭(リ・コウラン)さんっていうんです。中国の方で大阪育ちの人なんです。普段から個人的に発明品を作ってて、すごいものを作るんですよ。この帝劇の部隊も、紅蘭さんが携わっていることが多いんです」
「へぇ、すごいじゃないか」
帝劇にはスポットライトとか移動床などの舞台装置が配備されている。どれも複雑に見えて、ほんの一時の間の演劇でも短期間で作ったり組み立てなければならないことが多い。それほどのものの製作に何度も携わっているというのはすごいものだろう。
「あ…でも、時々発明品が爆発しちゃって、みんなを困らせちゃう人でもあるんですけどね」
「え?」
あはは、と苦笑いを浮かべる椿の口から爆発、という物騒にも聞こえる単語を耳にして、ジンは目を丸くした。
「あ、でもあの人も演技力もすごいんですよ。コントもお得意ですし、たくさんの人達があの人のギャグで笑ってくれるんです」
「お笑いが得意な発明家女優…」
ジンは腕を組んで、その利紅蘭という女性がどんな人なのかイメージしてみる。一応ブロマイドは売られているから顔は見ているのだが…。
(……変人なのか?もしかして…)
奇妙なイメージを抱かせる人間としか想像つかなかった。まぁ、どこぞの開く組織のように、平和に暮らしていた人間を改造して怪人にしてしまう、なんてことはしないだろうが。
「それにしても、夜とはいえ公演がない時間帯は結構静かなんだね、ここは。たくさんの人が働いているはずだろ?由里さんから聞いたんだけど」
ジンは今のところ顔を見たことがあるのは花組と、椿・かすみ・由里…裏方作業を行っている親方たちがいる。黒子を勤めている人たちや演奏を務める『奏組』とは一切顔を合わせられなかった。まるで最初からそこにいなかったかのような、まるで神隠しだ。
「普段の奏組の人たちは専用の寮にお住まいで、黒子担当
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