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歌集「春雪花」
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 常もなく

  時はうつろい

   息白く

 冬の凍て風

   夜を渡り

 いづこへ行くか

    問いけるも

 去りしや草木も

    枯れ果てて

 恋し君をば

    想えども

 影もなくして

    振り向かば

 哀れとぞ思ふ

     片恋の月



 同じものなどありもしない…時は絶え間なくうつろって行くもの…。
 喉かな秋も過ぎ去り、息も白く濁る冬となった…。
 その凍てつく風は夜にはさらに冷たくなり、私の心をも凍らせるのではないかとさえ思うほど…。
 一体何処へ吹いて行くのか…問い掛けても返すこともなく、ただただ…草木が枯れゆくだけだ。

 そんな季節…淋しくて彼を想って辺りを見ても、寂しげな風景が坦々と続いているだけ…。
 ふとした拍子に振り返ってみたら…こんな私を哀れと思ったのか、半分の月が大地を照していた…。

 あの月の半分の影が私なら…輝く半分はきっと彼なのだろう…。

 月はいつかは満月となるが、もう半分の輝き…彼の隣にあるのは私ではないのだ…。

 どんなに恋しくても…私は男なのだ…。決して選んではもらえない…。

 私はきっと…常にあの月の影なのだ…。




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