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神の贖罪
6部分:第六章
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他の病の者もですか」
「そうです。この際皆やってみます」
「まさかと思いますが」
 アサルは王の言葉を聞いて怪訝な顔になった。
「皆治すことができるのですか」
「はい、その通りです」
「ですからすぐにでも」
「わかりました。それでは」
 ヨッハルとヨッハルヴァも言った。アサルは半信半疑どころかまるで信じていなかったがそれでも三人の言葉を受けたのだった。そうして三人に言われる通り途方もなく大きな池を作り国中の怪我人と病人を集めた。三人はまず池に豚の皮を入れた。するとその池は忽ちのうちに。
「なっ、まさか」
「この様な」
 黄金柱国の者達は目の前で起こったことが信じられなかった。何と池の水が葡萄酒になったのだ。赤いかぐわしい香りの葡萄酒にだ。
「間違いない、これは」
「葡萄酒だ」
「うむ」
 皆その葡萄酒を飲んで口々に言う。中には酔いだす者さえいる。
「何故こんなに簡単に」
「湧いて出たというのだ」
「この豚の皮のおかげです」
 三人はこう一同に説明する。
「そしてですね」
「ええ、今度は一体」
「何でしょうか」
「さあ、皆さん」
 三人は今度は集まってもらっている怪我人と病人達に声をかけた。
「この豚の皮に触れて下さい」
「さあ、どうぞ」
「それで宜しいのですね」
「ええ、それだけでいいです」
「ですからどうか」
「わかりました」
 怪我人達はわからないまま三人の言葉に頷いた。病人達もだ。こうして次々に触れていくとそれだけで。彼等の怪我も病気も消えていった。見る見るうちにだった。
「嘘だ、こんな簡単に」
「怪我も病気も治るなんて」
「こんなことは有り得ない」
 皆口々に驚きの声をあげる。しかしそれは真実だった。彼等の怪我と病は消えてしまった。気付けば国中の怪我人も病人も消え去ってしまっていた。
「その豚の皮のお力ですね」
「はい、その通りです」
「これによってです」
 三人は呆然とするアサルに対して答えた。
「如何でしょうか、これで」
「七頭の豚は」
「ええ、どうぞ」
 アサルはにこりと笑って三人に述べた。
「持って行って下さい、是非」
「有り難き御言葉」
「有り難いのはこちらです」
 満面の笑顔で言葉を返すアサルだった。
「これだけの葡萄酒があれば次にできるまでに葡萄酒には困りません」
「そうですか」
「ええ。それに怪我人と病人がいなくなりました」
 これも非常に大きなことであった。
「ですから。その御礼にです」
「左様ですか」
「さあ、遠慮なさらずに」 
 こうまで言うアサルであった。
「お持ち帰り下さい」
「はい、それでは」
「是非」
 こうして三人は七頭の豚も手に入れたのであった。彼等は豚を何時でも食べられるようになった。しかもこの豚の
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