第二百三十三話 本能寺の変その六
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「今は相手に気付かれぬ備えをしようぞ」
「さすれば」
「ではな」
「明朝にまた」
こう告げてだ、幸村は麩の前を後にした、そして。
その話が終わってからだ、信長は帰蝶にまた話した。
「そういうことじゃ、よいな」
「はい、明日の朝にですね」
「来る、御主はもう決めておるか」
「ですからここにいます」
帰蝶は確かな微笑みで信長に答えた。
「上様をお守りします」
「済まぬな」
「それが女房の務めです」
こう言ってだ、帰蝶は具足を何時でも着られる用意をしてだった。そのうえで。
信長の隣にい続けた、二人は今は備えをして何時でも戦騰出来る様にしてまた休んだ。そうした朝を待っていた。
その朝になった、すると。
信長は何もない様にだ、起きるとまずは床を出て用を足した。そして。
手を洗い顔も洗うとだ、外がだった。
不意に、烏達が舞い降りた様に騒がしくなった、その外を見ると。
旗があった、その旗は。
「桔梗、まさか」
「上様、あの旗は」
傍に控えていた蘭丸が言って来た。
「まさか」
「若しやと思ったがな」
こう蘭丸に答えた。
「北西から来ると聞いてな」
「明智殿の旗です」
「うむ」
間違いないとだ、信長は答えた。
「あの旗はな」
「明智殿がとは」
「若しやとは思った、しかしな」
「しかしですか」
「間違いない」
桔梗の旗を見ての言葉だ。
「これが何よりの証じゃ」
「上様、では」
「これより武具を着る」
信長は蘭丸に落ち着いた声で述べた。
「その間頼むぞ」
「はい、この通り」
蘭丸は己の服の左肩に手をかけた、そして。
一気に脱ぐとだ、その下にもう青い具足と陣羽織があった。その服で信長の前で言うのだった。
「既に着ております」
「用意がいいのう」
「敵に気付かれぬでしょうか」
「少し後で行けばよいであろう」
「さすれば」
「さて、では大戦じゃ」
信長は悠然と笑ってさえいた。
「皆で戦いそして」
「落ち延びるのですな」
「死ぬことは許さぬ」
その笑みでの言葉だ。
「わかったな」
「さすれば」
「上様、明智殿です!」
「明智殿の兵が来ました!」
ここでだ、他の供の者達が言って来た。
「既にこの寺を囲んでいます!」
「攻めてきております!」
「わかっておる、是非もない」
信長は彼等にも落ち着いて返した。
「これより具足に着替えて来る」
「はい、では」
「それまで我等が時間を稼ぎます」
「そして、ですな」
「そのうえで」
「わしも戦おう」
こう言ってだ、信長は部屋に戻った、するとそこでは。
既に帰蝶が戦袴を着てだった、具足に陣羽織を身に着け額には鉢巻がある。そして右手には薙刀を持っている。
その姿でだ
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