巻ノ二十二 徳川家康という男その六
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「ここで東国に行くのも悪くない」
「では」
「ここからですな」
「駿府を見て」
「東国にも向かい」
「あちらも見ますか」
「そうしようぞ、北条家も見るべきであるしな」
その東国で覇を唱えてだ、真田家ともことを構えることが考えられるその家もというのだ。幸村は目を光らせて言った。
「ではな」
「はい、それでは」
「東国にも行きましょう」
「駿府、駿河も見て」
「そのうえで」
「ではな」
こう話してだ、そしてだった。
一行は駿府も見て回った、そして。
幸村は徳川家の武士達も見た、その彼等はというと。
どの者達も姿勢がよく逞しい身体をしていた、そして顔立ちも引き締まっている。幸村はその彼等を見て言った。
「三河、遠江の者達もじゃが」
「はい、非常にですな」
「英気に満ちていますな」
「これが徳川家の武士ですか」
「三河武士というが」
その徳川家が出た国だ、他ならぬ。
「武勇と忠義で有名であるが」
「それが顔にも姿勢にも出ていて」
「いい顔立ちですな」
「どの武士も」
「まことに」
「そして皆鍛えられていて」
「よい身体をしていますな」
「足の動きもです」
その捌きもというのだ。
「実によい」
「三河武士は相変わらず強いですな」
「全くじゃ」
そうだとだ、幸村も言った。
「相手をするならばじゃ」
「手強い」
「そのことは間違いありませぬな」
「やはり」
「そのことはな」
間違いないというのだ。
「だから用心せねばな」
「侮ってはなりませぬな」
「断じて」
「相手は誰でも侮ってはならん」
そもそもだ。幸村はそれ自体を戒めた。
「絶対にな」
「侮ればそこに隙が出来る」
「そしてそこから敗れる」
「殿がいつも言っておられますな」
「そうじゃ、だからじゃ」
例えだ、相手が誰であろうというのだ。
「侮るべきではない」
「そういうことですな」
「何があろうとも」
「侮ってはならない」
「相手は」
「そうすれば負けるからな」
それ故にというのだ。
「拙者はいつも肝に命じておる」
「獅子は鼠にも全力を尽くす」
ここでこう言ったのは猿飛だった。
「そうですな」
「その通りじゃ」
まさにというのだ。
「手を抜いてはならぬ」
「どの様な時も」
「何かをする時はな」
「そうですな」
「ましてやです」
霧隠も言う。
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