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神の贖罪
2部分:第二章
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 彼はさらに言ってきた。
「アンヴィルを使うといい」
「アンヴィルをか」
「そうだ。私の馬をな」
 アンヴィルとはルーの持っている魔法の馬だ。一日に千里を駆け何人でも乗せることができる。まさに神が乗るべき魔法の馬である。
「使うといい」
「いや、それはいい」
 しかしブリアンはそれを断ってきた。手を前に出して動作でも見せてきた。
「それはな。いい」
「いいのか」
「そうだ、我等の裁きは我等でつける」
「だからいいのだ」
 ヨッハルもヨッハルヴァもこう言ってルーの申し出を断るのであった。
「それについてはな」
「好意だけは受け取っておこう」
「本当にいいのか」
 ルーは三人のその毅然とした態度にかえって心配になった。何しろそれぞれの要求の困難さは話す彼が最もよくわかっていることだからだ。
「それで。本当に」
「いいと言っている」
「波鎮めさえあればそれで」
「いいのだ」
 三兄弟はそれぞれ言った。こうしてアルヴィルは受け取らないことになったのだ。
 三兄弟は遂に旅立った。彼等を家族と他の神々が見送る。裁きの結果だがそれでも見送るのだった。
「それではな」
「うむ」
 ブリアンはルーの言葉に応えていた。
「行って来る」
「死んだ我等の同志だが」
「生き返っているな」
「そうだ。貴殿等のことは怨んでいないそうだ」
「そうか。それは何よりだ」
 このことを聞いて笑みになる三兄弟だった。
「生きていて怨んでいないとならばな」
「それは安心してくれ」
 また言うルーであった。
「怨みは消えているからな」
「わかった。では安心して行って来る」
「うむ。しかしいいのだな」
 彼等を気遣う顔になっていた。見送りに海辺に集まっている神々も皆同じである。海は黒く訛りの色になっており空も重い。冷たい風が吹き荒れまるで三人のこれからの困難を現わしているようだった。その中での不安な顔はその重苦しさをさらに助長させるものであった。
「その船だけで」
「そうでなければ裁きの意味はあるまい。違うか」
「それはそうだが」
「安心しろ。必ず帰って来る」
 こうルーに告げた。

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