二十六話:舞台の終わり
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…え? なんで、体が動いているんだ? もう、世界を救うなんて諦めたのに……」
今にも動き出そうとしている自身の体に最も驚いたのは他ならぬ切嗣自身であった。
理想の為なら体は勝手に動いた。でも、今はその理想は砕けたはずだ。
立ち上がる気力すらない程に心は折れていたはずだ。
故にこの体が機械のように動くはずなどないというのに。
どうして体は今にも駆けださんとしているのだろうか。今の今になって。
「……ああ、そういうこと」
「なんなんだ、アリア?」
「衛宮切嗣という人間は、例え、理想が潰えようとも―――目の前で誰かが傷つくのを黙ってみていられないのよ」
目の前で困っている人がいるのなら助けたい。
目の前で誰かが傷つけられようとしているのなら体を張って守りたい。
―――目の前の誰かを助けたい。
そんな、子供が抱くような幼い心。
世界を救いたいという願いに比べれば余りにも小さくて。
理想の為に全てを犠牲にする覚悟と比べれば覚悟とも言えない程に幼稚で。
後先を考えることもない、呆れてしまうような愚かな想い。
だからこそ、理想も何もかもを失った男の心に残っていた。
衛宮切嗣の体を動かしていた本当の原動力。
「……ここで動いたら何か答えが得られるかな?」
「さあ、それはあなた次第じゃない?」
「そうだね。だとしたら……動くしかないかな」
未だに想いは定まらない。何をすればいいのかも分からない。
罪の意識だけが自身の内を占める。心がまだ動くのかと問いかける?
眼差しは朧げでかつてのような力強さなどどこにもない。
だが、体は動いてくれる。ほんの少しだけやりたいことは分かった。
どうせ、何もできない人生ならば、今この瞬間だけは。
―――愚かな想いに身をゆだねてもいいかもしれない。
「ピースメイカー」
『Mode Launcher.』
バインドを破りトンプソンを再起動させる。
同時にアリアのバインドも砕き、動けるようにする。
「アリア、僕が道を作る。君は凍結を頼む。封印は無理でも動きは止められるだろう」
「分かったわ。師匠としては助けたいところだし」
不思議な感覚だった。体のコンディションは最悪に近い。
構えたスコープが揺らいで見える程に狙いは定まらない。
だというのに、外すという考えが一切起きなかった。的が大きいからではない。
偽りの全能感。何を為すべきかだけで動いていた時にはなかった感覚。
後で今以上の後悔に襲われるかもしれない。折れた心が今度は擦りつぶされるかもしれない。
それでも今ここで動かないという選択を衛宮切嗣はできなかった。
「全員、闇の書の闇から離れろ」
『Stinger missi
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