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逆さの砂時計
孤独を歌う者 2
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思いますし。何よりそれを望んでいるのは」
 「喧しい!!」
 「! クロスツェル!」
 ドンッと突き飛ばされたクロスツェルの体が玉座の手摺によろめく。逆上したレゾネクトの右手がクロスツェルの心臓めがけて振り下ろされ
 「壊した物は簡単には直りません。だからと言って、楽をしようとしたら、余計な副作用を起こして望まない結果になりますよ。意識は向き合って初めて通じるものだと、貴方が一番よく知っている筈です。自分を見直しなさい、『鏡』」
 爪先がコートに触れるかどうかの位置で、ピタッと止まる。
 ……レゾネクトの腕が小刻みに震えてる?
 何事かと横に回って覗き見たクロスツェルの目の色が、妙に赤っぽいような黄色っぽいような。
 「……お前なのか」
 ?
 「私は私です。他の誰でもありません」
 レゾネクトの顔が、喜びのような怒りのような、悲しみのような苦しんでるような、複雑なものに変わっていく。
 「何故、お前までが拒む。もう一度会えると言うのに」
 クロスツェルは静かに目蓋を伏せて、首を横に振る。
 「私に彼女は救えません」
 「お前以外にあれは戻せない。笑わない」
 「いいえ。彼女の時間は進みました。違う形になっても、笑顔は忘れないでしょう」
 「何故……どうして手を離そうとするんだ……っ」
 「貴方が切り離したからです」
 「だから俺は!」
 「解かれたものは結び直せない。だから、新しく築くんですよ」
 言ってる内容はさっぱり解らないが……レゾネクトの腕を引き寄せ頭を抱えて撫でる姿は、小さい子供をあやしてる大人みたいだ。実年齢で言えば真逆だってのに。
 ……そう。これは大人と子供の遣り取りにしか見えないんだから、いちいち気持ち悪ぃとか砂を吐くなよ、ベゼドラ。
 「……お前が居ないと手に入らない」
 「いいえ。貴方も変われば良いのです。奪う者から、護る者へ」
 「お前じゃないと意味が無い」
 「……いいえ」
 「!? それはアルフの……! 止めて、レゾネクト!!」
 レゾネクトの頭上に紫色の剣が顕れる。その形に見覚えでもあるのか、幼女が短い悲鳴を上げる。
 鋭く尖った先が狙い定めてるのは……クロスツェルの頭。

 「お前に会わせないと、マリアは笑わないんだよ! アルフリード!!」

 レゾネクトの声に合わせて疾る剣。
 が、見上げたクロスツェルの目前で、それは弾けて消えた。
 「……いいえ。彼女を深く傷付けてしまったから、貴方には見えないのです。彼女の望みを映しなさい、レゾネクト。そうすれば貴方が為すべき事を理解できます」
 「マリアはお前以外と向き合わない!」
 「いいえ。彼女が今大切にしているのは、娘であるロザリアとアリアです。アルフリードは彼女の過去でしかない。生物は常に未来へ進むもの
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