3.『温もり』
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東はレミリアに抱きかかえられたまま礼をし、連れて行かれた。
何故か霊夢が機嫌を損ねかけていたので、たまたまポケットに入れていた十円玉を渡すと、恐ろしいくらいに大喜びした。
東は既に博麗神社が貧乏であることを見抜いていたのだ。そして博麗霊夢が金に対し貪欲であることも。
「あんた……なかなかやるわね」
「ふぇ、なにが?」
「……いや、なんでもない。あー、咲夜に新しい服とか用意させなくちゃ。でも男物なんてあったかしら……」
「……」
女物しかないことを見抜いたような気がしたが、気のせいにしておいた。
「(この幻想郷に来てから、発見がありすぎる。まぁ収穫が多いに越したことはない、か……)」
幻想郷全体を見渡せるほど上空を飛んでいるので肌寒いはずなのだが、レミリアの体温が妙に伝わってきて不思議と寒さを感じなかった。
東にはさすがに地形を見ただけで地図を作れる能力はない。変な根拠で下手に作ると、かえって危険なので、諦めて地図か何かをもらうことにした。
「ほら、見えてきたわよ。あれが私の館、紅魔館よ」
「え?……赤っ!?」
紅魔館は不気味なほど真っ赤だった。
確かに吸血鬼が住むにはふさわしいが、それにしても不気味すぎである。
大きな門を通り過ぎた。ナイフが大量に刺さった妖怪が立ちながら居眠りしており、東は首を傾げた。
真っ赤なバラに包まれた庭に降り立つと、東を解放した。
「(やっぱりこの子、ただの人間じゃないわ。私が抱きしめて苦痛の一つもこぼさない人の子なんて普通じゃありえないわよ)」
「えぇと、レミリアさんっ、すごいね、こんな大きなところに住んでるんだ!」
「……。……あぁ、恐ろしいかね?」
「かっこいい!」
「よくわかってるわねこの子!」
きゅむきゅむ抱きしめられ、東はなんとも複雑な気分になったが任務上仕方ない。
潜入捜査、特に他人になりすます場合、まずターゲットとの信頼を築くことが絶対条件であると言っても過言ではない。紅魔館は西洋建築の洋館であり、もちろんかっこいい部分もあるので一概にも否定し難いが、全面的に肯定するほどでもない。とりあえず「かっこいい」とだけ言えば大丈夫なのである。特に子供フォルムならば。
一方、レミリアは頭をフル回転させていた。
「(運命の見えない人間、ねぇ。今までそんなことなかったのに。博麗神社に置いておくには危なすぎる。しばらく紅魔館で様子を見て、この子について調べるしかないわね。パチェに力を借りるか)」
レミリアはまだ知らない。
東さえも知らない。
この先、予想にもしていないことを見てしまうことに。
館の中に入ると、わりと普通だった。さすがに目が痛いのだろう、赤一色ではなく普通の館のカラーである。絨毯は赤いが。
廊下を歩いていると、ク
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