暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−銀ノ月−
ガールズ・オプス-Cheer!!-
第九十話
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「あのお坊ちゃんアバターが懐かしいんじゃないの?」

「ありえない」

 最初に旧ALOに来た時に使った貴族のお坊ちゃんアバターについて、リズからの問いかけに隙を与えず答えながら、アバターを変えると語った時のひよりの言葉を思い返す。《クロ》はキリト――黒の剣士の強さを借りていただけの仮初めで、これからは自分自身のアバターで楽しんでいきたい、と。SAOでいなくなった大事な人の分まで、SAOで使っていたアバターで――と、ここまでで良かったのだが。

 最後に『……ですよね、翔希さん』などと言ったものだから、しっかりリズに『ポエマー』などとからかわれたのは別の話として。

「あ、来たみたいですよ!」

 そんなことを考えていると、初期配置地点に光が灯っていく。新たなキャラクターがログインするその証に、シリカは恐らくひよりだと当たりをつける。

「……ふぅ」

 その読みはどうやら当たったらしく、ウェーブのかかったロングヘアの少女――髪の色だけ弄ったらしく、現実とは違う水色が混じった流水のような銀髪で、シルフの初期装備が窮屈そうに現れた。

「……ん?」

 生成されていくルクスの脚部に、何か刺青のようなものが見えた気がした。見覚えのある形だったが、詳しく確かめるより速く服の下に隠れてしまう。

「初めまして……になるのかな。こっちでの名前は《ルクス》。よろしく頼むよ」

 そんな俺の違和感を知ることはなく。自己申告の通りに、口調がリアルと違い凛々しくなる彼女――《ルクス》だったが、その後に深々とお辞儀をしてきた。そんな、中身はあのひよりから変わっていないのだと感じさせる動作に、一同が安心したように小さく笑うと、ルクスが疑問を感じたのか首を傾げた。

「……変、かな?」

「んーん。ハンドル持つと性格変わっちゃう系なのねー」

「ルクスさんになっても変わらなくて安心したんです!」

 ルクスを囲んでかしましく談笑し始めようとしたその時、背後に回り込んでいたリーファが、何を思ったかルクスのスカートをチラリとめくる。

「リリリリーファ!? いきなり何を!?」

「あ、ごめ……何か見えた気がして……」

「リーファさん、セクハラはダメですよー?」

「違うってば!」

 どうやらリーファも彼女の足に何かを見たらしかったが、もうそこには何もなく。アバターを構築する際のポリゴン片が何かと見間違えたか、と思ったところ……ポン、と肩に手をかけられた。

「何をじっくり見てるの?」

「…………いえ、何も」

 こちらの肩を叩いて笑顔で語りかけてくるリズに、どうやって返答をするか、過去最高の速さで思考を回転させると――結果として、適当にごまかすというあまり有効でない返答となった。


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