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ウイングマン バルーンプラス編
4 避難
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自分の家の近所で恥ずかしい恰好を披露する事態だけは避けたいという一心から無我夢中になった結果、トップを譲ることはなかった。
まさに火事場の馬鹿力だった。
最後にちょっとした難関があった。
桃子の家の玄関の手前には、男子高校生が2人立っていたのだ。
下校途中なのかたまたま桃子の家の前を通ろうとした瞬間にポドリアルスペースが発生したのだろう。
桃子は知らない顔ではあったが、年頃の男の子の前をほぼ全裸で通らなければ、自分の家にはたどり着けない。この状況、余裕があったら、少しくらい恥ずかしがっていたかもしれない。
しかし、今は気にしてられなかった。
ポドリアルスペースが発動している最中だし、彼らに自分の姿が見えないことはわかっていた。それなら気にする必要なんてない!! 
勢いのまま、何の躊躇もすることなく男子高校生の前をほぼ全裸のまま突っ切った。
「間に合ったぁ〜」
桃子は安堵の声を思わずあげた。そこには何とも言えない達成感と安堵感がいっぺんにやってきた。

玄関を開けると誰もいないようだった。
そのことで安堵感はさらに増した。
しかしゆっくりもしてられない。
桃子は玄関を開けて、2人の到着を待った。
「アオイさん、美紅ちゃん! 急いで!」

次にやってきたのはアオイだった。
「ゲッ!?」
桃子の家の前にいた男子の顔を見て驚いた。
彼らはアオイのクラスメートだった。
知らない人でも恥ずかしいがクラスメートとなればその比ではない。
「なんでアンタたちがこんなところにいるのよ!?」
彼らに自分のことが見えていないことが一番わかっているはずのアオイだったが、思わず話しかけてしまった。
「ちょっと、アンタたちは向こう向いててね」
今、ポドリムススペースの崩壊が始まっても、桃子の家にはすぐ入れる場所まで来たことで余裕が生まれたからか、見えないはずの彼らの視線が気になったのだ。
そして、彼らの向きを反対側に向けた。
時間が動き出せば、彼らは元来た方向へ戻っていくことになるがアオイの知ったことではなかった。
「よいしょっと」
1人の向きを変え、もう1人に取りかかろうとしたときに、キュインキュインと音が聞こえてきた。
「ヤバイ。ポドリアルスペースが解除されちゃう」
慌ててもう1人の向きを変えると、すぐに桃子の家に入った。
「美紅ちゃんは?」
玄関からは美紅の様子は見えない。桃子は友人の様子が心配で、アオイに尋ねた。
アオイは猛ダッシュで向かってくる美紅の姿を確認していた。
あと100メートルくらいに思えた。
途中でトイレットペーパーのふんどしも汗によって溶けてしまい、完全に全裸にしか見えない格好になってしまっていた。そのことに気づいてしまった美紅は、恥ずかしさのあまり、2人からだいぶ遅れてしまったのだ。
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